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プロローグ 高校卒業して4年経った… 俺は、今、新人として会社を勤めてる… 皆の状況を知らせて置く事にしよう 谷口は、現在NEET化になって、職探しを求めてる 国木田は、高校の教師として勤めてる 鶴屋さんは、父の跡継ぎに働いてると聞いた 古泉は、政治界に入って活躍してるらしい 朝比奈さんは、一時に未来へ帰ったが…去年帰って来て、現在はOLとして勤めてる 長門は、本が好きで図書館の仕事に勤めてる ハルヒ?ハルヒは…「ムー」と言う本の編集者になって働いてる… やれやれ、ハルヒはこういうの好きだからな… さて、仕事が終わり、家に帰る所だが… 偶然、あの懐かしき涼宮ハルヒに会った… 「!…ハルヒ?」 ハルヒ「ん?誰?あたしをよ……!キョン?」 3年ぶりの再会である… しかし、こんな時間に何やってんだ? ハルヒ「仕事よ、仕事…宇宙がどうのこうのって奴よ」 そ…そうか… ハルヒ「それにしても、久しぶりね…元気してた?」 「あぁ、してたさ」 ハルヒ「そぅ………」 「ん?今何で言った?」 ハルヒ「何でもないわ…そうだ、一緒に居酒屋へ行かない?」 …ま、多分、俺の奢りだろうよ… ハルヒ「違うわ、あたしが奢るよ」 …そ、そうか… ……ハルヒ、変わった…のか? さて、今、居酒屋に居る… ハルヒ「さ、何でもいいわ!すみませーん、ビール2つ」 ?…あれ?…ハルヒって、酒に弱かったっけ? 「ハルヒ、酒弱かったんじゃないのか?」 ハルヒ「アレは、昔の事よ?昔と同じしないでね」 …そうか、確かにハルヒは変わった… 確かに、変わったんだがな…何か、腑に落ちない感じがする この後、二人で仕事の話、懐かしき日の話など喋った…笑ったりもした。 そして、帰り道… ハルヒ「ねぇ、キョン…電話番号とメアド教えてくれない?」 ん?いきなり何言ってるんだろうか? 「あぁ、教えてやる…090-……で、家は……そして、メアドは……これだけだな」 ハルヒ「ありがとう、まだ機会あったらメール送るわ」 「あぁ、分かった…」 …変わったんだな、ハルヒ… 「……帰るか」 ふぃー、疲れた… 今、俺が住んでる場所は…都会内の少し金高かったマンションである… 部屋は、シンプルな空間になってる… 「…シャワーでも浴びるか…」 サァー… 涼宮ハルヒ、6、7年前…初めて会った… SOS団も作って活動した…あの夢も激しく覚えてる… そして、3年後…ハルヒはこう言った…泣きそうな声で 「SOS団はこれでお終いです…あたしは、楽しかったわ…… 別れるのは…おしいけど…いつか、まだ会える気がするわ… 元気でね…皆…ありがとう…そして、さようなら…」 あの時は覚えてる…アレから4年経ったのか… ふぃー…さっぱりした… ♪~♪~♪~ ?携帯鳴ってるな…誰だろうか… [メール着信 涼宮ハルヒ] ハルヒ!? しかし、何故、メールが来るんだ? 取りあえず、開くか… From涼宮ハルヒ Subキョンへ ――――――――――――― 今日は楽しかったわ!ありが とう! あたしの頼み…聞いてくれる? 土曜日に遊園地行かない? 返信待ってます。 ハルヒ……土曜日は…何も無いな… …よし、返信しよう…勿論行くとな… しかし、こっちの方が憂鬱だね ハルヒがあんなに変わるとは誰も予想しなかったとは… 土曜日ね… さて、今日は土曜日である! 俺が勝手に「デート」だと思っておく事にしよう 俺の愛車に乗って待ち合わせへ向かう… 確か、○○公園だな…お、ここだ!ここだ! さて、ハルヒは… ハルヒ「♪~♪~♪~」 いた 何やら、楽しみにしてるように鼻唄を歌ってる…行くかな 「よぅ、ハルヒ…待たせてスマなかったな」 ハルヒ「ううん、いいの…混んでたんでしょ?」 「ん、まぁ…そういう事だ…んで、どこの遊園地?」 ハルヒ「東京と言えば、ディ○ニーランドだけど…ダメかな?」 !?…か、可愛い!こんなに前より可愛くなったな… 取りあえず、今の感情を表に出さないでっと 「いや、構わんよ、金は十分あるからな」 ハルヒ「ありがと!キョン」 こうして、ディ○ニーランドへ向かったのである 今、遊園地に着いたけど、大変だった 交通道路を利用しようと思ったら混んでるわ 遊園地の近くに渋滞あるわ ははははは…見ろよ!人がゴミのようだ!と思われるぐらい、いっぱいいた… トータルして、2時間掛かったね ハルヒ「ホントにゴメンね」 「いや、行きたがったんだろ?だから、いいじゃないか…どれ乗る?」 ハルヒ「そうね、ジェットコースター乗りたいわね」 「了解!」 と、俺は軍人みたいに敬礼した ハルヒ「あはははは…何、軍人みたいな事してるのよ」 「はははは…」 とまぁ、色々楽しく乗り物乗ったり、買い物したりもした。 「っと、日が暮れたな…」 ハルヒ「そうね…最後に観覧車乗って帰ろっか」 「そうだな」 と、ハルヒと一緒に観覧車へ足を運んだのである 金を払い、ハルヒと一緒に観覧車に乗った。 …何だが、変な雰囲気になりそうだ… 長い長い沈黙が続いたが…それを破ったのは ハルヒ「ねぇ、キョン…」 ハルヒである… 「何だ?」 ハルヒ「綺麗だね」 「…あぁ」 「……」 「……」 むぅ、耐えられんな…この沈黙は… ハルヒ「ねぇ、キョン…あたしの話聞いてくれる?」 「…何だ?」 ハルヒサイド あたしは、初めてキョンに会った時、少し戸惑いだわ… 小学校頃、ある男に似てだからね… そして、あたしはそう思った…この人ならあたしを変えてくれるかな?と… その結果、少しだけ…ほんの少しだけ変わったわ…キョン、あんたに感謝したいわ… ………キョン、これだけは言わせて…あたしは、あんたが好きよ…大好きだから… 4年間、あんたと離れて物凄く寂しかったの…寂しかったのよ! キョン!あたしは物凄く…物凄く…うっ、ううっ…うっ… ハルヒサイド終了 ハルヒ「うっ…うっうっ…」 ハルヒ…4年間、寂しい思いをしてたのか… 「ハルヒ、ゴメンな…4年間、お前の気持ち分かってなくで… 本当にゴメンな!俺だって、ハルヒの事が好きだ…大好きなんだ…」 ハルヒ「キョン…」 言え!俺よ!チャンスは一度しかない! 「ハルヒ…ちゃんと聞いてくれ…」 ハルヒ「う、うん…」 「け、けっ…け、け、けっ…ふー…結婚しよう!お前を幸せしてやる!」 ハルヒ「え!?」 「やれやれ…何と言ったら分かるんだ…幸せしてやるよ…ハルヒ」 ハルヒ「あ、あぁ…あ…キョン!ありがとう!キョン」 と、めでたくキスしたのである… 「お、ハルヒ…外見ろよ」 ハルヒ「え?…わぁ…雪だ…」 「あぁ…」 ハルヒ「キョン…」 「ハルヒ」 と、まだキスした ――ありがとう、キョン… エピローグ 数ヵ月後…色々あったが… 俺は、ハルヒとめでたく結婚した! みくる「おめでとうございます」 ありがとう、朝比奈さん 古泉「おめでどうございます。あなたの尻を見たかったですけどね」 ありがとな、だけど…いい加減ホモから卒業しろ 長門「……おめでとう」 ありがとう、長門…長門もいい相手見つけてくれよ 谷口「君の心に今すぐアクセス!いやいや、おめでとう!キョン」 ありがとうよ、だが…今のカッコ悪い… 国木田「おめでとう、キョン」 おぅ、ありがとよ 鶴屋「おでとう、キョンくん!めがっさ頑張って!」 ありがとう、鶴屋さん と、まぁ…ここへ来た皆様がお祝いしてくれたのである。 「……ハルヒ」 ハルヒ「ん?」 「今日の夜はアレだから、準備してなwww」 「え!?あ、その…もぅ、キョン!恥ずかしい事言わないでよ!」 「ははははは…」 そして、ハルヒは仕事を辞め、主婦として少し忙しい日々を送ってる キョンはハルヒのために、一生懸命働いてる。 二人は、今、幸せである… 完
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ハルヒ(…………) ハルヒ「あ、私用事があるんだった! 有希は大丈夫だと思うけど、キョン!問題はあんたよ!今日のシミュレーションを踏まえてきっちりと進路を決めなさい!」 キョン(……あんなのに意味ないだろ) ハルヒ「じゃあ、また明日ね!」 バタンッ みくる「…………はぁ、疲れました」 古泉「慣れないキャラは難しいですね。 それはそうとキョンさんの駄目男ぶり、なかなか見事でしたよ」 キョン「やってて気分が悪いな、あーいうのは」 みくる「それが社会のつらさなのかもしれませんね」 夜、キョンの部屋にて キョン「………だめだ。何も思いうかばん」 キョン(結局体良くハルヒに遊ばれただけじゃないのか…?) キョン「だいたいシミュレートしてるのは職業じゃなくて職に就いた人間の生活じゃないかアレは。 ……全く………」 ピンポ~ン キョン「ん?こんな時間に誰だ?」 ドタドタドタ…… キョン「はーい」 ガチャッ 長門「………」 キョン「おう長門か。どうした?」 長門「涼宮ハルヒの宿題」 キョン「あぁ、あれが?長門はできたのか?」 長門「……まだ。だからここへ来た。 一人よりも、二人のほうが早い」 キョン「………」 長門「………」 キョン(……親が留守だとはいえ、女の子をこの時間に自室に入れるのはいかがなもなか) 長門「………そろそろ開始めたい」 キョン「あ、あぁ」(まぁ相手はあの長門だし、問題ないか) 長門「………」ドサッ キョン「おわっ!?なんだこの紙の量は!?」 長門「給与水準等から優れた職業をピックアップした資料。あなたの力になる」 キョン「…そ、それはどうも」 ……… …… … キョン(これだけの資料があっても浮かばんもんは浮かばん) 長門「………」 キョン(…潜在意識として働くことを拒否してるのか?) 長門「……私のデータは」 キョン「いや、役に立ってるんだが、俺には荷が重すぎる職業ばかりだ」 キョン「弁護士は給与は高いが、司法試験は狭き門。会計士はそれより難しい。医者なんか生きた人の腹を切るなんてことは俺にはできない」 長門「……そう?」 キョン「あぁ」 長門「……私からも質問がある」 長門「あなたと行なったシミュレート」 キョン「あぁ、あれか。あれが?」 長門「………私の役割だったあの女性は、あなたたちから見るとどう感じるの…?」 キョン「…? あぁ、そりゃ不幸な女性さ。旦那にあんな扱いされて」 長門「何故」 キョン「何故って……飯作って待ってるのに帰ってきて『いらん』とか言われたり」 長門「………」 キョン「あと、その……女遊びが激しかったり」 長門「………幸せじゃ……ないの?」 キョン「それはないと思うけどなぁ」 長門「………理解した」 ガタン キョン「あれ?長門……。帰るのか?」 長門「私が長時間ここにいることは、あなたにとって問題かと思われる」 キョン(………否定はしない) キョン「進路志望調査、書けてないだろ?いいのか?」 長門「……涼宮ハルヒはあなたをマークしている。私が書かなくてもしばらくは問題ないと推測する」 キョン「……なるほどね」 キョン「ありがとうな。データ、助かる」 長門「問題ない」 キョン「……送ろうか?夜道は危ないし」 長門「……ここでいい」 キョン「……わかった。じゃ、また明日な」 長門「……(こくん)」 バタンッ 長門「……………」 ハルヒ「今日の放課後、マンツーマンで進路考えてあげる?」
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あってはならない惨劇から半日もの間、俺は一歩も動けずただじっと座っていることしかできなかった。 俺が読んでいた国木田のノートは全部偽物? それどころか、俺の妄想にすぎなかってのか? だが、あの正体不明のノートのおかげでそれが現実になり、古泉たちの存在まで書き換えてしまった。 そして、俺が作り出した妄想で俺が悪の組織に仕立て上げた機関の人たちを俺の手で皆殺しにしてしまった。 「いつまでそうやっているつもり?」 力なく自動車道の縁石に座り込んでいる俺の隣には、ずっと朝倉がいた。座りもせずにただただ優しげな笑みを浮かべ 俺をじっと見下ろしている。 俺は力なく路面を見つめたまま、 「……何もする気が起きないんだよ」 「でも、何もしないからといってこの現実は変わらないわよ」 朝倉の台詞は陳腐にすら思えるほど定番なものに感じた。その通りだ。何もしないからといって何が変わるわけもない。 だが…… 「どうしろってんだよ……! 死んだ人間はもう生き返らなねえんだぞ! こんな……こんなことをやらかして どの面下げてハルヒたちのところにいけって言うんだ!」 絞り上げれられたような声が口から吐き出た。そうだ。もうどうしようもない。どうにもならない…… 「ごめんなさい……」 ここに来て朝倉の声が変わった。今までのにこやかなものとはうってかわり、悲痛に満ちたものに変化している。 俺はすっと頭を上げて、朝倉を見た。そこには初めて見るような悲しげな表情を浮かべた彼女の顔があった。 「さっきはごめんなさい」 朝倉は謝罪を続けるが、なぜ謝る? 「思わずあなたが悪いように責めちゃったから。少し考えてみたけど、やっぱりあなたは悪くないわ」 「安っぽい同情なんて止めてくれ。そんなことをされても虚しくなるだけだ……」 「いいえ、これは重要なことなの」 そう言うと朝倉はすっとしゃがみ込んで俺の背後に回り、ささやくように言葉を続ける。 「あなたは悪くないわ。やったのはあのノートをあなたに渡した人よ。何の目的があってやったのかは知らないけど、 あなたを陥れようとしていたことは確実だわ」 「だが、いくら誘導されても俺がみんなを信じ切れなかったことは確かなんだよ! あんな妄言なんて信じずに まず古泉たちに一言相談すれば良かったんだ」 俺は頭を埋め尽くす後悔の念に耐えられなくなり、手で顔を覆う。 少し考えればわかったことだった。最初に機関にあのノートを見せるなというのは、 国木田に対する信頼もあったから否定することは難しかったかも知れない。だが、内容は今考えれば明らかにおかしい。 そもそもなぜ回想録のように今までのことを振り返る形式で書かれている? そんな重要な告発文なら とっとと結論を書いておくはずだ。理由は簡単。あの時俺の頭には、国木田がどうして、どうやって機関に入ったのかを 知りたい願望があった。だから、あのノートの内容を裏で操作していた奴は、それを叶えるように回想録のような形式にした。 俺は自分が知りたいという願望が忠実に再現されていたため、その内容に全く違和感を憶えていなかった。 そして、次に決定的に不自然だったのがページからページに飛ぶ際だ。まれに続きが気になるような切れ方をしていたが、 その次のページには俺が望んだとおりの内容が書かれていた。あれが知りたい、これはこうだったんじゃないか―― そう言った要求や想像に的確に答えている。考えればすぐにわかったことだ。 それなのに俺はまるで何も考えず、その内容をただ受け入れた。 その時は良いと思っても、あとで見返せばとんでもなく問題のある行為だった、なんていう話は日常ではよく見かける。 俺はこの重要な局面でそれを犯してしまったんだ。 「それは違うわ。そもそも、あんなノートを使ってあなたの猜疑心を煽るなんて言うことがなければ、 こんな事にはならなかったのよ? 色々条件が整えば、誰でもつい不安に思ったりしちゃう。 大抵の場合は、それは時間が進んで別の事実に付き合わせれば、ただの妄想に過ぎないって解消されるわ。 でもね、このノートは徹底的にあなたを煽り続けたの。不安に不安を募らせて、あまつさえ現実へ介入さえした。 だから、全てに置いて矛盾が発生しなかった。こんなことは第3者の悪意がなければ成り立たない話よ。 はっきりと言えるわ、あなたのせいじゃないって」 「だが……やっちまったことには変わりがないんだよ。もうどうしようも……」 ここで朝倉はすっと俺の背中に抱きついてきた。そして、さらに耳元でささやき始める。 「自分のミスが許せないのね。でもね、こんな理不尽な話があると思う? 自分のせいじゃないのに、とんでもなく大きい罪を 着せられてしまう。やった本人に復讐はできるけど、だからといって起きてしまったことが変わる訳じゃない。 あなたはそんな不合理が許せる?」 「それが現実って奴だ。一度やってしまったことが消えるなんて言うことはあり得ない」 「でも、その方法が一つだけ存在していると言ったらどうする?」 朝倉の言葉に、俺ははっと顔を上げた。俺のミスが全部無かったことになる? バカ言うな。そんなことがあるわけがない。 だが、朝倉はしゃがんだまま俺の前に立ち、両手で俺の方をなでるようにつかむと、 「あるわ。一つだけね。そして、その方法をあなたは知っている……」 俺を見つめている朝倉の瞳に吸い込まれそうな感覚に陥る。そんな方法が存在していて、俺が知っている? この俺の失態を無かったことにできる方法は一つ。死んだ古泉たちを生き返らせるぐらいしかないぞ。 そんなことはいくら望んでも適うわけが――いや、ある。確かにある。 「……あのノートだ! あそこに俺が殺してしまった人たちが生き返るように書けば――」 「それは無理。少なくともあなたが望むようなことにはならないわ」 「なんでだ! あそこに書いたものは全て現実になるんだろ? なら生き返れと書けば生き返るはずだっ!」 つばを飛ばして力説する俺だったが、朝倉は顔を背けることもなく、ゆっくりと首を振って、 「有機生命体の生存活動を再開することは可能だと思う。でも、それでできあがるのはただ生きているだけで意思のかけらもない ただのタンパク質の固まりのようなものだけよ。記憶、感情、身体的構造……あなたはそれを全て知っている? それを事細かに表現して、ノートに記さなければ、あなたが望んだ人形ができあがるだけだわ」 「だったら全部元通りって書けばいいだろ!」 「それもどうかしら? 曖昧な記述では、どういう作用の仕方をするかわからないわよ? それにあのノートの背後に あなたを誘導していた人がいることを忘れないで。そいつの意思で記述の内容をどうにでも書き換えられるんだから。 やってみる? うまくいくかも知れないし、失敗するかも知れない。あなたに任せるわ。でも、そんなリスクのある方法よりも もっと確実な手段をあなたは知っているはずよ。よく考えてみて」 朝倉の問いかけに、俺は再度思考をめぐらせる。確かにノートの使用にはリスクが生じる。 そもそも、あれは俺を陥れるために渡されたものだ。同じ事が再現するだけかも知れない。 そうなれば、もっと良い方法があるならそっちを選択するべきだな。他には――他に―― 次に脳裏に過ぎったのは、過去に遡ってとっととあのノートを破り捨ててしまう方法だ。 そうだ、過去を改ざんしてしまえば惨劇は全てなかったことにできる。それを可能にするためには 朝比奈さんのTPDDがあれば可能だ。そうだ、それでいい。 だが、すぐに問題点が頭に浮かんだ。まず朝比奈さんがTPDDを使わせてくれるのだろうか? いや、大体あれを使うかどうかは、過去の朝比奈さんの言葉から察するに彼女一人の判断ではできない。 未来側の許可がいることになっているようだ。俺のミスを帳消しにしたいから過去に戻りたいなんていって許可が下りるか? 到底、そんなことが認められるとは思えない。それに、過去を変えてしまったら、今こうやって自分の失態に苦しんで 打開策を悩んでいる俺自身はどうなる? 過去が帰られたが故に、俺のいる未来そのものがばっさりと切り捨てられることになる。 それでは何の意味もない。 「――涼宮ハルヒ」 唐突に朝倉の口から飛び出してきた言葉。ハルヒ。長門曰く情報爆発であり、朝比奈さん曰く時間の断層、 古泉に至っては神と呼ぶ存在。そして、それが有している力は何でも作り出せる情報創造能力。 「……そうか。ハルヒか! 確かにこんな閉鎖空間を平気に作り出せる奴だ! あいつの能力をちょっとだけ使わせてもらえば、 こんなことは全部無かったことにできるかも知れない! そうだハルヒだ!」 至った結論に俺は大きく笑い出してしまった。さっきまでの絶望感が嘘のように無くなり、閉鎖空間の灰色も ずっと明るくなっているようにすら感じられる。 「そうよ、涼宮さんの力を使えば何でもできるわ。あなたの理想がすべて叶うのよ。それってすごく素敵な事じゃない? そして、あなたは涼宮さんにとって大きな存在でもある。自覚さえしてくれれば、きっとあなたの言うことも叶えてくれるはずね」 「だが、どうすればいいんだ?」 ここで朝倉は俺の頬から手を離し、立ち上がる。そして、すっと空を見上げると、 「実を言うとね、あたしは涼宮さんの居場所を知っているの。でも、頑固に閉じこもっちゃってて出てこないのよ。 だから、あなたに説得して欲しいのね」 「……わかった。すまないがハルヒのところまで案内してくれ」 「うん、そうする。でね、ちょっとお願いがあるんだけど……」 朝倉はもじもじした仕草を見せつつ、 「あなたが涼宮さんにお願いするときに、あたしの願いも叶えて欲しいの」 「いいぞ、そのくらい。ハルヒに頼んでやるさ」 「ありがとう! じゃあ、これから涼宮さんのところに連れて行ってあげる♪」 そう言って朝倉は軽い足取りで俺の手を引き始めた。そうだ、ハルヒのところへ行こう。そうすれば、全て終わるんだから―― ――目を覚ませ! この大バカ野郎が!―― 「いてっ!」 耳に背後から聞いたことのあるような無いような声が届いたかと思ったら、頭の頂点分を何かで思いっきり殴られた痛みが走る。 ヘルメットを外していたおかげで、何かが頭を直撃したようだ。 俺はあまりの痛みに頭をさすりながら、振り返る。せっかく気分が良くなったってのに、なんだ一体! ……しかし、振り返った瞬間、俺の身体が凍り付いた。なぜならそこには一瞬だけ『俺』がいたように見えたからだ。 すぐに2,3度目をこすって見返す。すると、『俺』の姿はすでに消えていた。幻覚でも見たかと思ったが、 頭の痛みはそのままだ。なんだってんだ。 「どうかしたの?」 俺の異変に気がついたのか、朝倉が不思議そうにこっちを見つめている。俺は痛みの残る部分をさすり、 特に怪我とかをしていないことを確認しつつ、 「いや……何でもねえよ。さあ、とっととハルヒのところへ行こうぜ」 「うん、わかった」 そう言って俺たちはまた歩き出す。しかし、さっきのは何だったんだ? 一瞬俺の姿も見えた気がしたが、 それにその前に浴びせられた罵倒は俺の声じゃなかったか? まさかドッペルゲンガーじゃねえよな。 それとも俺の深層心理の部分で何か引っかかるものがあるとでも言うのだろうか。目を覚ませ。それがその時聞こえた言葉の一つ。 「……目を覚ませ――か」 その台詞はあのノートに騙されている時にかけられるべき言葉だろ。俺の第六感ってのは反応まで半日以上かかるような 鈍い代物なのか? まあいい。もうそんなことなんてどうでもいいんだ。ハルヒの元に行けば全て解決するんだからな。 ――騙されないでっ!―― 今度は可愛らしいが鼓膜が吹っ飛ぶぐらいの声が脳内に響く。 ――お願いですっ! しっかりしてくださぁいっ!―― しばらく声の音量がでかすぎて気がつかなかったが、ようやくわかった。 「……朝比奈さんですか!?」 俺の頭の中の声は間違いなく朝比奈さんのものだった。ああ、2年近く聞いていなかったが、このエンジェルボイスだけは どんなことがあってもわすれるつもりはねえぞ。 ――キョンくんっキョンくんっ! 気を確かにしてくださいぃ! がんばって! しっかり!―― 「いや朝比奈さん! 声をかけてくれるのは大変ありがたいんですが、もうちょっと音量を下げて……。 鼓膜がいかれるどころか、脳内の音声認識回路までふっとんじまいそうですよ!」 ――あ、すみませんっ……ごめんなさいぃぃぃぃぃ―― もうこのふにゃふにゃな対応は朝比奈さんそのものだ。これがまた朝倉のように脳内イメージから作り出されたっていう偽物なら 俺はもう何にも信じられなくなるぞ―― ……唐突に。本当に唐突に気がついた。いや、気がついたと言うよりもあの『目を覚ませ』『しっかりしてくださぁい』の 意味がようやくわかったといった方がいいだろう。ちっ、何で今まで気がつかなかった? 「本当にどうしたの? 大丈夫?」 また朝倉が不思議そうな顔+不安な顔を俺に向けてきていた、 俺は立ち止まったまま朝倉を凝視し 「お前は誰だ?」 その言葉に、朝倉の顔にわずかながら動揺が走った。まるで気が付かれたかと言いたげなように少しだけ引きつっている。 だが、すぐにいつもの柔らかい笑顔に戻ると、 「そんなこと知ってどうするの? あたしのことなんかより、今のあなたにはやらなければならないことがあるんじゃない?」 「そうだ。だからこそ、不安要素は全て消し去っておきたいんだよ」 俺の返答に、朝倉は今度ははっきりと失望の表情を浮かべた。そして、視線を下げたまま俺の元に歩いてくる。 ――キョンくん気をつけて。その人は……―― ああ、朝比奈さん。今度は声が小さすぎて聞こえませんよ。何ですか? だが朝比奈さんが再び声をかけるまでに、朝倉が俺の前に立ち、とんでもないバカ力で俺の肩をつかんできた。 「良いから黙って付いてくればいいのよっ!」 俺は驚愕する。今さっきまでは確かに俺の前にいたのは朝倉涼子だった。あの谷口はAA+評価を下すような完璧の美少女。 だが、今俺の肩をつかんでいるのは、全く見たことすらない中年女だった。浴びせてきた声も可愛らしいものとは正反対の すり切れて低い声だ。 ――その人はキョンくんの知っている人ではありません!―― 「何で言うことを聞かない!?」 朝倉――いや、中年女のどす黒い罵声が俺の身体を震わせる。その顔は怒りと悪意で醜くねじ曲がり、異様な殺気を 噴出していた。上から下まで見回しても見たことのない奴だ。俺が生まれてきてから見てきた人の中に こんな奴は全く該当しない。誰なんだ。 「あんたは黙って言うことを聞けばいいっ! そうすれば、仲間を皆殺しにした罪は全部消えるんだよっ! 何の損がある!? まだ何か不満でもあるって言うのかいっ!?」 「――離せこの野郎!」 俺は必死にその中年女引きはがそうとするが、化け物じみた力で俺を押さえつけているらしく全く微動だにしない。 挙げ句の果てに、怒りにまかせて俺の身体を揺さぶり始めると、 「どうしてあたしの邪魔ばかりするっ! どいつもこいつも気にくわない! せっかく優しくしてやったのに、 平然と疑いやがって! 何様のつもりだ、このくそ男が!」 あまりの罵倒ぶりに一瞬頭の中が空っぽになる。何だ、こいつは。今まで変な奴も見たことはあったが、 度を超して狂っているぞ、こいつは。 「ああそうかい! お前がそんな態度を取るってなら、こっちも情けなんてかけないよ! 今すぐお前の思考能力を奪ってあたしの人形に仕立て上げてやる――」 『そうはさせない』 今度は長門の声が俺の頭の中に響いた。ほどなくして、中年女の表情が一変して俺から離れようとするが、 すぐに醜い悲鳴を上げて苦しみ始める。ああ、はっきりいって展開について行けてねえぞ俺は! 「ふざけやがって! 死ね! みんな死んじまえ! どいつもこいつも! みんな消えて無くなればいいのよ! 消えちまえっ!」 そう最期まで汚らしい罵声を上げながら、その中年女の姿が原子分解でもされたかのように光の粉となって消えていく。 そう言えば、長門が朝倉を消滅させた時もあんな状態だったな…… 『時間がない。すぐあなたを別の時間軸へ転移させる』 いや、長門。少しは俺に説明してくれよ。はっきり言って訳がわからなくて、頭の中でA~Zまでの単語がバウンドして 暴れ回っているんだ。 『急がないと彼らがやってくる。すぐに行きたい場所を思い浮かべて』 ああ、もうわかったよ。その代わりあとでゆっくりと事情を聞かせてもらうぞ。ところで、どうやって別の時間に行くんだ? 長門は確か時間移動できないんじゃないのか? 『朝比奈みくるのTPDDを強制起動して使用する。今あなたを危険性のない空間に移動させるにはそれしかない。 同一時間平面上では彼らはすぐに追いかけてくる』 ――ええっ!? ちょちょちょっと待ってくださぁいぃ!―― 朝比奈さんもパニックになっているぞ。やっぱりもうちょっと落ち着いてだな…… 『来た』 「え――」 長門の言葉に反応して、俺は辺りを見回して――腰を抜かした。いつの間二やら、俺の周りを大勢の人間が囲んでいた。 男女年齢性別に関わらず、一応に無表情な顔つきで俺を睨みつけている。明らかに敵意を感じるぞ。 『彼らにあなたを渡すわけにはいかない。彼らはあなたの外見と記憶だけが必要。一度捕まれば、あなたの自我意識は 修復不可能なレベルまで分解される。そうなれば、どれだけ情報操作を行っても元には戻せない』 「うわっわわわっ!」 俺は長門の言葉も耳に入らず、腰を抜かして辺りを逃げ回った。だが、不思議なことにそいつらは立ち止まったまま、 一向に俺の方に近づいて来ようとしない。 ――ほどなくして、まるでラジオの奥底からかすかに聞こえるような小さな物音が耳に届き始める。 じわりじわりとその音量が大きくなっていき、次第に耐えられないほどの騒音とかしてきた。 俺は必死に耳を閉じてそれをシャットダウンしようとするが、直接脳が認識しているせいか全く効果がない。 その騒音は最初はただの意味をなさない雑音だと思っていた。だが、たまに人間の言葉らしきものが混じっていることに 気が付く。それはさっきあの中年女が言っていたのと全く同じようなものだった。 罵倒の応酬。今俺の頭にそんなものがぶつけられている。このままだと長持ちしねえぞ。 『彼らが互いを牽制している。今の内に、あなたを移動させる。早く行きたい場所を思い浮かべて』 ええい、また説明もなく急転直下の展開か! だが、これ以上耳元で騒がれたら本当におかしくなる! やむ得ず、喧噪の中、俺はどこに行きたいか考え始める。色々頭に浮かぶが雑音が邪魔してまとまらねえ。 行きたい場所――会いたい人。長門は完全ではないが、会った。朝比奈さんはさっきようやく声が聞けた。 なら、まだたった一人声を聞けていない人物…… ……その時、俺はハルヒに会いたいと思った。 ◇◇◇◇ 俺はいつの間にか閉じられていた目を開く。 重力を失ったように、俺は暗闇の中を漂っていた。いや、薄暗いものの周りには何かが見える―― 『ちょっとキョン。のどが乾いたからみんなにジュースを買ってきなさい。あ、当然あんたのおごりでね』 『何で俺が』 耳に入ってきた会話。エコーがかかったようにぼやけたものだったが、はっきりと聞き覚えのあるものだった。 俺は目をこすって辺りを確認する。薄暗く霞がかかったみたいに視界が悪い。それに光が屈折しているかのようにゆがんでいる。 何とかそんな視界にようやく慣れてきたころ、俺は今目の前で何が起ころうとしているのか悟った。 待て! そっちに行くな! 必死に叫ぶが、声が出ない。 視線の先には脳天気に自動販売機を目指して歩いている奴がいる。どっからどうみても俺だ。あの日――俺が事故にあった日。 今俺はその時間にいるんだ。だが、どうしてこんな中途半端な状態なんだ? 必死に泳ぐように俺の後を追おうとするが、蹴るものが何もない状態では進みようがない。周りには俺の姿が見えていないのか、 誰一人こっちを気にかける人もいない。 止めなきゃならん。俺が事故に遭うのを阻止できれば、その先に起こる悲劇は全部起きなくなるんだ。 今ここにいる俺が消えるかも知れない? 知ったことか! 目の前で起こることの結末を知っていながら見過ごすほど 落ちぶれちゃいねえ! すぐに身体中を手で探り、何か使えるものがないか探す。しかし、使えそうなものは何もなかった。 このままではあと数十秒で俺が盛大にはねられるというのに、何もできずにただ見ているだけなんてまっぴらゴメンだ。 俺はふと思い出す。靴を脱ぎかけの状態にし、目の前を歩くの俺の反対方向へ蹴り飛ばした。すると思った通りに 反作用が発生して、ゆっくりと俺の身体が流れるように動き出す。よしいいぞ。このまま俺の背中を捕まえてやる。 ゆっくりと移動し、俺の背中に迫る。幸いまだ信号待ちの状態だ。このまま手を伸ばせば―― 『邪魔をするな』 衝撃を伴った大勢の声が辺りに響く。俺は一瞬身構えて、辺りを見回した。 誰もいない――いや違う! 俺の方を見つめている人たちがいる。歩道を歩いている老人、公園のベンチに座っている青年、 自動車に乗るOL、自転車に乗ったまま立ち止まっている女子学生……周りを歩く一般人たちの中にポツンポツンと 俺の存在に気が付いているように見ている人がいる。 ――瞬間、俺は気が付いた。目の前にいた俺の背中が横断歩道を歩き始めていることに。 待て! 進むな! それ以上進むと…… そして、はっきりと目撃した。目の前で俺がトラックに轢かれる瞬間をだ。確かに一瞬俺の身体はバラバラになっていた。 しかし、すぐにビデオの逆再生のように復元される。振り返れば、ハルヒが手を伸ばしてこっちに走ってきていた。 やはり、ハルヒが俺の傷を癒していたのか? トラックはすぐにバランスを崩して、近くの電柱に突っ込んだ。激しい衝突音が耳を貫き、ほどなくしてクラクションの音が 虚しく鳴り続けるようになる。 『キョン! キョン!』 ハルヒがすぐに路上に倒れたままぴくりとも動かない俺のそばに駆け寄った。続いて、朝比奈さん、長門、古泉も真っ青な顔で 俺の様子をうかがう。 古泉は思い出したように携帯電話を取り出すと何やら話し始めた。おそらく救急車を呼んでいるんだろう。 朝比奈さんは泣きじゃくりながら俺への呼びかけを続けている。一方の長門は、俺の身体に何も異変がないことを察知したのだろう 少し安心したような――表情には出していないがそんな雰囲気を見せながら、辺りの様子をうかがっていた。 そこで思い出す。さっき俺を見ていた連中を再度見回すと、今度は倒れている俺辺りを全員で見つめていた。 こいつらはいったい何なんだ? 一方の長門も全身のオーラを一変させて、強い警戒感をあらわにしている。 と、そこで見つめたまま動かなかった自転車に乗った女子学生が無表情から心配そうな表情に変化させて、 俺のそばに寄ってきた。どうやら身を案じているようだったが、それをすぐに長門が遮る。 『近寄らないで。重傷のおそれがある。専門知識を持った人以外は触れない方がいい』 その言葉に、女子学生は納得したような表情を浮かべたが、そいつが軽く舌打ちしたのを俺は見逃さなかった。 長門の言葉を聞いたのか、古泉がハルヒと朝比奈さんを俺から引き離し始める。二人は完全に腰を抜かしてしまっているようで、 もう何も言えずに路上に座り込んでいた。 ほどなくして、救急車がたどり着き、救急隊員が俺の様態を調べ始める。一方の長門は、やはり殺気の連中が気になるのか、 俺から少し離れてその周りをグルグル回っていた。 ――だが、長門の死角になったあたりで、あろうことか救急隊員の一人が妙な行動を取った。俺の額に手を当てて 何かをしている。明らかに医療行為とは違う。なぜなら、そいつの顔が狂気に染まった笑みを浮かべているからだ。 だが、長門は周りに警戒心を見せているために、それには気が付いていなかった。 やがて、担架に乗せられた俺は救急車に運び込まれ、ハルヒたちも乗り込んだ。そのまま、病院に向けて走り出す。 野次馬がそのまま残って見ている中、俺たちを見ていた連中はまるで何も起きなかったように、その場を去っていった。 ちくしょう……せっかく大チャンスだったってのに、何もできずに終わるなんて……! 後悔と自分の無力さを嘆くが、どうにもならない。これからどうする? まだ別の場所に移動できるのか? このまま浮遊したままなんてゴメンだ。 俺はまた願い始める…… ◇◇◇◇ 「ぐはっ!」 強烈な落下感とともに、俺の背中に強烈な刺激が展開した。一瞬呼吸が止まり、全身に震えが走る。 俺はしばらくそれにもだえていたが、ほどなく寝ころんだまま手で周りを探り始めた。どうやら仰向けに倒れているらしい。 手のひらに床のような冷たい感触が感じられる。とりあえず、海の上とか水中とか火の中とか、地獄巡りな場所ではなさそうだ。 ゆっくりと目を開けると、見覚えのある天井と蛍光灯が目に入った。いや、見覚えがあるどころか懐かしいと表現した方がいい。 続いて身体を起こして、辺りを見回す。部屋の中央に置かれたテーブル、古めかしい黒板、脇には朝比奈さんのコスプレ衣装、 ノートパソコンの山…… 次に目に入ったものに、俺は目を疑った。『部室』にある窓、そしてその前に置かれている『団長席』とパソコン。 そして、そこに座って唖然とした表情を浮かべるSOS団団長の涼宮ハルヒの姿…… 「キョン!?」 ハルヒは俺の姿を見るや否や、椅子をけっ飛ばして俺の元に駆け寄る。ハルヒ? ハルヒなのか? 本当に? 「ちょっとどうしたのよ……っていうか、あんた病院で眠っているんじゃなかったの!? でも何よ、その軍隊みたいな格好は!」 「い、いや、ちょっと待て! 俺も何が何だかわからなくて混乱――」 この時、俺の目がハルヒの視線に捕まった。まあ、眼力パワーはもの凄いハルヒなわけだから、ここで頬を赤らめて 視線を外したりはしないし、そもそもそんなことは期待していないんだが。代わりに俺の胃の辺りから 今までに感じたことの無いような感覚囲み上がってくる。 我慢しておくべきか? いや、周りには誰もいないしな、そんな必要はないだろ。 だが、俺にだってプライドがあるんだ。相手はあのハルヒだぞ? いいのか? 自分の気持ちに素直になったって良いじゃないか。こんな時ぐらいは。 えーと、何で俺は問答をしているんだ? いいじゃねえか。ここでやらなかったら、次にいつ逢えるか―― いつ逢えるかわからないんだ! 「ハルヒっ!」 俺はハルヒに抱きついた。強く強く抱きしめる。 唐突な行動に、ハルヒは当然ながら、 「ちょ、ちょっと何すんのよキョン! 放しなさいってば!」 「……すまん! 少しだけ! 少しだけこのままでいさせてくれ……!」 懇願する俺にハルヒは観念したのか、代わりに俺の背中をなで始め、 「まあ……いいわ。何があったのか知らないけど、団員が辛いときは団長がそれを受け止めてあげなきゃね」 「すまねえ……すまねえ……」 俺は謝罪の言葉を続けながら、ハルヒを抱きしめ続ける。離したくなかった。ずっとこのままつなぎ止めておきたかった。 でなければ、次いつ逢えるかわからないから。 「ちょっと休みなさい。あんた、すごく疲れているみたいだからね。ふふっ、大丈夫よ。ずっとそばにいて上げるから……」 ハルヒの言うとおり、俺には相当な疲労がたまっていたのだろう。ほどなくして俺は深い眠りに落ちていった。 ◇◇◇◇ どのくらい眠っただろうか。俺は自分が長時間眠っていたことを自覚したとたん、がばっと起き上がる。 そして、辺りをきょろきょろ見回し、状況確認に努める。 辺りはすっかり暗くなり、月明かりだけがSOS団部室を照らしていた。そして、その中をハルヒは団長席に 突っ伏するようにすーすーと寝息を立てて眠っている。俺のためにずっと残っていてくれたのか? 俺はとりあえずハルヒを起こさないように、状況確認を再開した。まず今の日付だ。カレンダーをのぞくと、 どうやら俺が事故に遭ってからちょうど14日目になる。ん、そういや、古泉から聞いた説明だと、 俺が昏睡状態になってから一週間後、ハルヒはSOS団の部室に閉じこもったと言っていた。ならハルヒはもうここにこもって 一週間が経過していると言うことになるが……。 ちょっと待て。そして、ハルヒが閉じこもってから一週間後に確か全世界で神人が大量発生したはずじゃなかったか? そうなるともうすぐそれが起きるということになる。 俺は時計を見た。時刻は22時過ぎ。残念ながら神人発生の詳しい時刻までは聞いていなかったが、俺が昏睡状態になってから 2週間後に大惨事が発生したことは確実だ。そうなると、近々それが発生すると言うことになる。 すぐにハルヒを起こそうとして、窓際に経って気が付く。外に誰かがいる。それも校庭、向かい側の校舎の廊下、屋上と ありとあらゆる場所に人がいて、そこから不気味な視線を向けられている。なんだったんだ。 とにかくハルヒを起こさなくてはならない。俺は軽くハルヒの背中を揺さぶる。 「……んあ?」 間の抜けた声を上げるが、目の前に俺の顔があることがわかるとすぐに口に付いたよだれを拭いて、 「ちょっと! なに人の寝顔を見てんのよっ!」 「しっ! 静かにしろって!」 俺は怒鳴り始めたハルヒの口を押さえる。しばらく抗議の声を上げて口をもぐもぐさせていたが、 窓の外を指さして外にいる連中の存在を知らせると、すぐに頷いて黙った。 ハルヒが大人しくなったことを確認すると、俺は手をどけて、 「外にいる連中にも憶えがあるか?」 そう俺たちを監視するように見ている連中を指さす。ハルヒはかなり不安そうな表情を浮かべて、 「……あんたが事故に遭ってから何度か見かけているわ。最初はあたしを遠くから眺めている程度だったけど、 一週間前ぐらいになるとエスカレートしてきて、自宅の部屋まで現れたわ。その時は叫んだらすぐに消えたけど、 それ以降ずっとあたしの周りをまとわりついてくるの。それも一人じゃない。すごく大勢」 「今、外にいる連中はそいつらってことか」 ハルヒは恐る恐る外を見て、 「うん。あいつらどういうわけか部室の中には入ってこないの。だから、あたし一週間前からずっと閉じこもったっきり」 「長門や朝比奈さんも部室に入れていないのか?」 「あいつら、みんなの後ろにくっついて入ってこようとしたのよ」 ぞっとする話だ。自宅の寝室まで上がり込んでくるなんてただの犯罪者のように見えるが、騒いだら消える? まるで幽霊じゃないか。大体、何で教師たちは気が付いていない? ハルヒはふるふると首を振って、 「わかんない。何度も学校側や警察に訴えたわ。でも、あたしには見えるのに写真やカメラには全く写らないの。 みくるちゃんたちも気が付いていないみたい。そのせいで、幻覚を見ているんだろうと相手にしてくれなくて」 そこでハルヒははっと気が付いたらしく、 「キョン! あんたにはあいつらが見えるの!?」 「ああ……不愉快だがばっちり視線に捉えている」 そう言いながら、外を一瞥する。はっきりとはわからないが、あの棒立ちのような姿を見る限り、俺の事故現場にいたやつらと 同質の連中だろう。あの時は俺を見ているのかと思ったが、本当はハルヒを見ていたのか。だが目的は? ふと、もう一つの事実に気が付く。少し混乱していたせいで記憶は定かではないが、あの棒立ちの様子は 過去にとばされる寸前に俺を囲っていた奴らに雰囲気がそっくりだ? 何モンなんだ一体。 「って、お前一週間もここに閉じこもっているのかよ。その間のメシとかはどうしたんだ?」 「古泉くんが持ってきてくれたわ。ドアの前に置いてもらって、あたしが隙を見て回収してた。トイレもたまにこっそりと出てね。 それでも最近はすぐ扉の前に立っていたりするからうかつに開けられなくて……」 ホラー映画かよ。マジで勘弁してくれ。となると今もドアの外に立っている可能性があるって事だ。 それじゃ、うかつに出れやしねえ。 俺は再度連中の姿を確認するべく、外を眺める。と、急にハルヒが俺の手を握ってきて、 「……キョン。あんたキョンよね? あたしにはわかる。別人じゃない。正真正銘のキョン本人だわ。でも、キョンは病院で 眠っているはずよ。どういう事か説明して」 当然の疑問だな。一週間籠城していたハルヒの前に、病院で寝ているはずの俺が、迷彩服姿で出現したんだ。 おかしいと思わない方がどうかしている。 俺は返答に困ってしまった。どう答えればいいのか、自分でもわからないんだからしょうがない。 あの閉鎖空間の一件、さらに今俺たちを囲んでいるの正体。何一つわかりゃしねえんだから。 「……わりい。俺も自分がどうしてここにいるのかさっぱりなんだ」 「そう……」 ハルヒは俺から目をそらす。思えば、さっきからハルヒらしい傍若無人な姿は全く見せていない。外の連中に よっぽど怖い目に遭わされたのだろう。そう思うと、俺に激しい怒りが立ちこめてくる。 「今俺がはっきりと断言できるのは、ハルヒ、俺はお前の味方だ。例えどんな状況になろうともな」 「…………!」 そんな俺の言葉が予想外のものだったのか、ハルヒは何かこみ上げてくるものがあったらしく顔を紅潮させていた。 が、すぐに顔を振ってそれを振り払うように、 「当然よ当然! 団員は団長のためにきりきり働くの! それが社会や組織の原理ってもんだわ!」 腕を組んでえらそうに言ってくれるよ全く。でも……その方がハルヒらしいけどな。 ◇◇◇◇ 午前1時。0時に何かが起きるのではと緊迫していたが、一向にあの白い化け物が現れる気配はない。ハルヒに異常もない。 退屈そうにネットをやっているぐらいだ。 ――気が付いたときには遅かった。異変はとっくに起こっていたのだ。 俺がようやくそれに気が付いたのは、外の連中の様子をうかがった時だ。 「…………?」 見れば、いつの間にやら取り囲んでいた連中の姿が無い。さっきまでが嘘のように無人になっている。 「――きゃあ!」 次に起こったのはハルヒの悲鳴だ。俺があわてて駆け寄ると、パソコンの液晶ディスプレイの画面が渦を巻くように ゆがんでいる。ただの故障かと思ったが、そんなものではないことがすぐにわかった。何せ、ディスプレイが盛り上がり、 そこから何かが出てこようとし始めたからだ。 俺はすぐにディスプレイの電源を引っこ抜くが、一向に電源が落ちない。次第に盛り上がってくるディスプレイが 人の顔のようになってきていることに気が付いた。まさか、パソコンのネット回線を介して侵入してきやがったのか!? すぐにそのディスプレイを壁に叩きつけて破壊する。ぱちぱちとスパークする音がなり、ディスプレイの電源が落ちた。 盛りだしていた人の形をした物体も消えていく。 「今までネットをやっていて大丈夫だったのか!?」 「き、昨日までは何にも起きてなかった……ひっ!」 ハルヒの短い悲鳴。今度はなんだと思えば、ホラー映画のワンシーンのように部室の扉がゆっくりと開き始めている。 バカな。ちゃんと鍵はかけておいたはずだぞ。 しかし、そんな俺の抗議も無視して扉は完全に開いてしまった。そこには黒いセーラー服を纏った少女が一人立っている。 やはり見たことのない奴だ。 俺は何か武器になるものはないかと辺りを回し、掃除用具入れからモップを取り出して構えた。 「来るな! 今すぐ出て行け! 怪我してもしらねえぞ!」 そうモップを振り回して威嚇してみるが、完全にそれを無視してその少女は部屋の中に入ってきた。 さらにその後に続くように大勢の人――子供から老人まで様々――が部室内に入ってくる。 多勢に無勢。俺は戦っても相手にならないと思い、ハルヒの手を引いて窓際まで下がる。仕方がない。ここは二階だが、 飛び降りれないこともない。一か八か飛び降りるしか…… しかし、その考えはすぐに打ち砕かれた。バタバタ!と窓が揺さぶられ何事だと振り返ってみて、 ――腰を抜かした。そこには獲物をほしがっている肉食動物のように、人間の顔が大量に窓に押しつけられている。 ぎしぎしと力を込めて今にも窓が破壊されそうだ。一方で出入り口の扉からは次々と連中が流れ込んで来ている。 囲まれちまったぞ。 「何の用だ! とっとと出て行きやがれ!」 俺はモップを振り回して奴らを追い払おうとするが、全く連中は動じない。それどころか、一人の少年があっさりと それを取り上げて部室の脇に投げ捨ててしまった。 じりじりと狭まる包囲網。窓の外は奴らで埋め尽くされ、入り口も溢れかえっている。逃げ場がないのだ。 が、奴らの動きが止まった。窓のきしむ音も聞こえなくなる。今度は何だ―― ――突如上がる悲鳴。言葉に表現できないような絶望的な声を上げ始めたのはハルヒだ。頭を抱えて床を転がり周り 痛みにもだえるかのように泣き声を上げる。 「ハルヒ! どうしたハルヒ! しっかりしろ!」 俺は必死にハルヒを抱きかかえ、落ち着かせようとするが、ハルヒは目もうつろに口からよだれを流して悲鳴を上げ続ける。 このままじゃハルヒがおかしくなっちまう。誰か! 頼む! 誰か助けてくれ! 俺の叫びが通じたのかはわからない。突然、部室の壁が吹っ飛んだ。衝撃にしばらく耐えていたが、 やがてそれが収まったことを感じ取ると、目を開く。 そこには北高のセーラー服を着た長門の姿があった。すぐ横にはおびえる朝比奈さんの姿もある。 「遅くなった」 「だ、だいじょうぶですかぁ!?」 二人の声。だが、久しぶりの再会に感動している場合ではない。ハルヒはもう声すら上げられない状態になっているんだ。 「長門! 朝比奈さん! 頼む――ハルヒを助けてくれ! お願いだ!」 俺の言葉に反応するように、長門が手を振った。するとなんということか。連中の姿が全て消失する。助かった! 全く長門さまさまだ。 が。 「遅かった」 長門の言葉は絶望に満ちていたように感じる。なんだ? 長門が奴らを消し去ってくれたんじゃなかったのか―― 『なぜだ!』 突然起きる脳内ボイス。あの閉鎖空間や事故現場で聞こえたのと同じものだ。もの凄い圧力で俺の全身を揺さぶってくる。 『お前ら邪魔だ!』 『お前こそ邪魔だ!』 『うるさいわね! 無能な連中は消えてよ!』 『なんだとこの野郎!』 『邪魔しないでよ~! お願いだからぁ~』 『くそ野郎!』 『何なのあんたたちは!』 『お願いだ! 一つだけで良い! 頼む!』 『俺以外みんな消えろ!』 洪水のように襲いかかる罵声の嵐。俺は耐えられなくなり床に倒れ込む。だが、そんなことをしている場合ではない。 口を開けたまま完全に意識を失っているハルヒが目の前にいるんだ。助けないと! そこの長門がやってきて、 「すでに涼宮ハルヒの意識の一部分が彼らに浸食された。このままでは全ての意識を奪われる可能性がある」 「何でも良いからハルヒを!」 「わかっている。すぐに自立防御を精神階層に張り巡らせ、これ以上の浸食を防ぐ」 そう言って長門はハルヒの額に手を当ててあの高速呪文を唱え始めた。 その時だった。俺の背中が月明かり以外の何かで照らされていることに気が付く。そして、窓の外にいたのは、 「神……人?」 あの光の巨人。ハルヒのストレスが最高潮になったときに閉鎖空間内で暴れ回る怪物。そいつが閉鎖空間ではないのに 今目の前に生まれ出ようとしている。 「なん……で」 「彼らのストレスが最高潮に達した証。それを解消するべく発生させた」 長門の淡々とした説明に俺は、 「ここは閉鎖空間じゃねえぞ! なんでだ!」 「涼宮ハルヒが閉鎖空間内であれを発生させていた理由は無用な被害を出さないため。だが、涼宮ハルヒの能力を一部奪った彼らは そのような認識を持っていない。自ら以外の有機生命体の死を持ってそれを解消させようとしている」 「ば……!」 冗談ではない。大量殺戮でストレス解消だと! ふざけんな! ハルヒの力をそんなふざけたことに使うんじゃねえ! だが、俺の抗議なんて通じるわけもなく、神人は破壊活動を開始した。俺が知っている神人発生と同じならば 奴らは全世界に発生して暴れているはずだ。 と、長門が急に辺りを見回し始めた。 「これは」 「今度は何だ!?」 「閉鎖空間が発生した。発生させているのは涼宮ハルヒ本人」 「何だと……!?」 最初は何が起きているのかわからなかったが、すぐに理解できた。ハルヒは神人の発生を感じ取り、あわてて閉鎖空間を 発生させて神人を閉じこめようとしているんだ。全ては被害を出さないために。 なんて……奴だよ、ハルヒ。お前はそこまで……! 長門は今度は俺の手を握り、 「あなたはここにいてはいけない。すぐにもとの時間軸へ戻るべき。危険。彼らに利用される」 「目の前でハルヒが苦しみながら戦っているのに、逃げ出せって言うのか!?」 「ここであなたができることは何もない。でも、あなたがいた時間にはできることがある。その時間上のわたしが言っている」 『一時的だが脅威は排除した。もう戻って問題ない』 頭の中に響く長門の声。それは目の前でハルヒの手当をしている長門ではない。閉鎖空間の中で俺の身体を 乗っ取ったときと同じだ。何でここにいる? 『朝比奈みくるのTPDDを再度使用した。ここにも朝比奈みくるがいるので、同じ方法で戻れる』 「だがよ……世界がどうなるかわかっているのに……」 「自分の力を過信しないで」 そう反論してきたのは、ハルヒの手当をしている長門だ。俺の方をじっと見つめている。 「できなくても誰もあなたを責めたりはしない。あなたはあなたができることを確実にするべき」 『そう。そして、元の時間ではあなたを信頼している人たちが待っている』 まさか……古泉たちか!? だが、みんな俺の手で…… 『それは全て欺瞞。全ては彼らがあなたを利用するために手段。全員の無事は確認している』 ……そうか。よかった……よかった……! まだ俺はやり直せる……! 俺はすっとハルヒの両手を握る。 「待っていてくれハルヒ。絶対に迎えに来るからな! 少しだけ――少しだけ辛抱してくれ……!」 続いて、長門と朝比奈さんを交互に見回して、 「長門、朝比奈さん。ハルヒのこと……頼みます!」 「は、はい! がんばります!」 「あなたが来るまで全て対応する。任せて。必ず守ってみせる」 俺はすっと立ち上がり、町を破壊している神人を睨み付ける。何だかしらねえが、これ以上好き放題させねえ。 「長門! 俺を元の時間にもどしてくれ!」 『わかった』 長門の声と同時に、俺の意識が闇へと落ちた…… ~~その5へ~~
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「それじゃ、くじを引いてもらうわ」 爪楊枝に色をつけただけの、涼宮自作のくじを引く。最初は俺、次は佐々木、そして鶴屋さんに朝比奈さん、 最後に古泉が引く。 「あたりは誰?」 色付きが当たりだと涼宮は言った。爪楊枝を見てみると、当たりは・・・・・・ 「キョンとあたしね!」 涼宮は何故か嬉しそうに言った。 SOS団の超監督・涼宮ハルヒが撮影している映画の撮影は佳境を迎えていた。 体育祭が終わって、最初の日曜日、俺は佐々木に付き添って、涼宮たちの撮影を見学に来ていた。 涼宮の撮影は、見ていてかなり無茶苦茶なもののように思えるが、多分古泉が何とかするのだろう。 涼宮の要求に、佐々木はうまく答えている。何をやらせても佐々木はそつなくこなす。 「OK,これで佐々木さんの場面は終了よ。ご苦労さま、佐々木さん」 「どういたしまして。なかなか面白い体験だったわ。出来上がりが楽しみね」 「この私が撮ったんだから、面白いものになっているわよ」 その根拠無き自信はどっから来ているんだ? 撮影終了後、俺達は最近古泉が見つけたという喫茶店に入った。 「コ-ヒ-だけでなく、ここは紅茶やフードメニュ―も美味しいですよ」 古泉の言葉に嘘はなく、確かに満足いく味だった。コ-ヒ-の香りも味わいも良く、ランチメニュ-も美味しくて 量も多い。古泉はなかなかの食通のようである。 食後のデザ-トを味わっていると、涼宮が今から不思議探索に行こう、と言い出した。 「けっこう早く撮影が終わったから、時間もあることだし、探索をするわよ!キョンに佐々木さんも付きあいなさいよ」 まあ、俺は時間はあるが、佐々木、お前は大丈夫か? 「僕は構わないよ。今日は撮影以外は予定はなかったしね」 ふむ、佐々木がいいと言うのなら、俺も付きあうとするか。 そう言って、俺らはくじを引くことになった。 それで冒頭の結果になったわけだが、俺と涼宮以外はまとめて行動するらしい。 この人数なら、3対3で二組を作るのが妥当だと思ったんだが、涼宮の考えはよくわからん。 「それじゃ一時間後に、ここの近くの公園に集合ね」 涼宮はSOS団の団員達と佐々木にそう告げると、俺の腕を掴んで引っ張る。 「さっさといくわよ!」 せっかちな奴だな、コイツは。 「キョン、じゃあ一時間後に」 ああ。まあ、そんなに簡単に不思議なものが見つかるとも思えんがな。 俺はため息をついて、涼宮に引っ張られながら、その場を去った。 体育祭のあと、街は急速に秋色の色彩をまとうようになっていた。 俺は佐々木と出かけた時に購入した、新品の秋物を着ていた。今日は佐々木もあの時に購入した洋服を着ている。 今、俺の横を歩いているのは佐々木でなく、くじ引きでペアを組むことになった涼宮だ。 何が嬉しいのかしらんが、今日の涼宮はかなり機嫌が良さそうだ。そして、かなり早いペースで先に進んでいる。 おい、涼宮。もう少しゆっくり進んだらどうだ。だいたい、お前はどこに行こうとしているんだ。 「さっきから言っているじゃないの、不思議がありそうなところだって」 何か夏休みの合同旅行のときも同じことを言っていたような気がするが。 川沿いの並木道の街路樹達も、少し秋模様を纏い始めていて、公園の植物たちにもその気配が感じられる。 ”小さい秋、見つけた” 幼い頃効いた歌の意味が、今わかるような気がした。 「キョン、あんたも急ぎなさいよ。時間は一時間しかないのよ。団長が集合時間に遅刻したら、団員たちに合わせる 顔がなくなるわ」 俺は公園のベンチに腰掛けた。 「ちょっと、キョン。何座ってんのよ!」 いいからお前も座れよ。急ぐ必要はないと思うんだが。 何事かブツブツ言いながらも、涼宮は俺の隣に腰掛けた。 「この公園に何か不思議なものがあるの?」 大ありだ。公園だけじゃない。今、俺たちが歩いてきた街中にたくさんあった。 「どこにそんなものがあったのよ」 俺達の前に、秋風に吹かれた木の葉が一枚落ちてきた。 季節の移り変わり。限りなく続き、繰り返されながらも同じものではない過ぎ行く時の流れ。自然が見せる魔法の技。 「・・・・・・あんた、結構気障なことを言うのね。それ、文芸部の感性なわけ?」 文芸部というより、佐々木の影響かもな。あいつの言語感性は鋭いものがある。いろんなことを知っているし、表 現力も豊かだからな。 俺は立ち上がり、自動販売機の前に行き、ジュ-スを二本買い、一本を涼宮に渡した。 「あんたと佐々木さんて、付き合い長いわけ?」 お前と古泉ぐらいの長さかな。そんなに長くはないのかもしれんが、今じゃ一番一緒に行動しているのは佐々木だし、 そう考えると、これも不思議なことかもしれないな。 「ふーん。で、あんたにとって、佐々木さんは結局どんな存在なわけ?」 涼宮の問に、俺は少し考え込む。 あいつは俺のことを親友と言ってくれる。そう呼ばれるのは、誇らしいことだし、とても嬉しい。 だが、俺自身はどう思っているのか。 ”親友” そんな言葉だけじゃたりないほど、最近は佐々木の存在は俺の心の中で大きくなっている。 夏休みの旅行の花火の日の夜。 佐々木に向かって言いそびれた言葉がある。 ”どこにも行くなよ” 佐々木が俺の前から消えてしまいそうな、不安な気持ちに襲われることがある。 あいつの側にいることがふさわしい人間になると願いを書いた、七夕の日。 佐々木の存在は俺にとって・・・・・・ 「うまくは言葉にできないが、俺にとって大切なもの、大事にしたいと思う存在。そんな感じかな」 「さて、我々はどこに行きましょうか」 キョンが涼宮さんに引っ張られて店を出て行ったあと、取り残された私たちは、とりあえず何をするか 相談することにした。 「時間は一時間もあるんだしね。ハルにゃんみたいに不思議探しに行ってもいいけど、まあ、ここでゆ っくり話すのも悪くはないかもよ」 「鶴屋さん、前から思っていたんですけど、涼宮さんの”不思議探し”って一体何なのですか?」 私の疑問に、鶴屋さんは豪快に笑いながらこう言った。 「さあね。ハルにゃんの頭の中は、私にもわからないっさ。だけども、一つ言えるのは、ハルにゃんの 心を揺さぶるもの、それじゃないかね」 そして、こう続けた。 「今のハルにゃんの心を揺さぶるものは、キョン君だと思うんだよ、私は」 「キョン?なぜ、涼宮さんがキョンを気にかけるのですか?」 自分の口調が、いささか強く感じられたのは気のせいじゃない。鶴屋さんの言葉に、少し過剰反応した ようだ。 「涼宮さんに”きっかけ”を与えたからですよ」 古泉くんが私の疑問に答える。 「SOS団の設立にしても、きっかけは彼の言葉です。中学時代からの涼宮さんを知る僕としては、明らかに 彼女は内面的に成長していると感じます。中学校の時の彼女は、どちらかといえば孤立しがちな、他人との 接触を忌避しているようなところがありましたからね。自分でクラブを作り、部員を集めるなんて、あの時の ままだったら、絶対にやりませんね。ただ、僕が転校してきたとき、真っ先に声をかけてくれたのは涼宮さん ですが」 他人との接触が煩わしい、特に男の子に感じることがあった。 私が男性と話すときに使う『僕』の名称と言葉。それは端的に言えば、私の心の盾。 キョンは私が使う言葉についても、何も言わなかった。彼と話すうちに、私は心の盾を下ろしていた(た だし、口調はなかなか元に戻らず、かえって意識してしまうので、キョンと話すときは”僕”のままだけど) 「ハルにゃんがキョン君を気にかけているのは確かだね。未だにSOS団にキョン君をスカウトしたいみたいだし」 「涼宮さんが特定の男性を気にかけるのは、僕にはとても不思議なことに思えますね」 「おんや、どうしてそう思うんだい、古泉君?」 「涼宮さんが昔言っていたんですよ。『恋愛は精神病』だって。異性に執着するのは病気と同じ、とか言ってましたから」 どこかで聞いた、というより昔キョンに私が言っていたままの言葉をきいて、私はおもわず、咳き込みそうになる。 「佐々っち。佐々っちにとって、キョン君はどんな存在なんだい?」 (何か某おもちゃ会社の商品のように呼ばれたけど)鶴屋さんは私に問いかける。 思わず、引き込まれそうな笑顔で、でも目の奥には真剣な光がある。決して茶化したような感じではない。 ならば、私も真面目に答えよう。ごまかす必要もない。 涼宮さんさんの気持ちの一端を知った今なら、なおさらだ。 「親友、て昔は思っていました。でも今はその言葉だけじゃ足りません。キョンは・・・・・・」 一息ついて言葉を続ける。 「私にとって、なくてはならない存在。そばにいて欲しい、そばにいたい。そう思える人です」
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涼宮ハルヒの遭遇Ⅱ さて、こういう場合はどういう言い訳を思いつけばいいのだろう? なんせ、俺はポニーハルヒに向こうの世界の俺のあだ名のことを問い詰めようと両肩を掴んで詰め寄っていたんだ。しかもポニーハルヒの表情は少し頬を染めて上気気味だったんだぜ。 その静止画像を見てしまえば、俺とポニーハルヒがイケナイことをしている場面に見えないこともない訳で、となるとこの後の展開がどうなるのかという想像をするのもたやすいってもんさ。 事実、今現在俺は自分の予想した通りの展開に陥っている訳だが…… 「で、これはどういうことなのかきちんと説明してくれるわよねぇ? キョぉン?」 ぎりぎりと俺のネクタイを締め付けるハルヒパワーは現在天井知らずで、おそらく今年、どんな猛暑が来ようともこの熱さには絶対に勝てないことだろう。 って、ちょっと待て。これは本気でやばい。窒息の危険を俺は完全に感じてしまっている。 「こ、古泉! 頼む! 助けてくれ!」 長門に頼もうものならちと手加減というものを知らなそうだし、ポニーハルヒはいきなりの展開にオロオロ状態な訳だから役に立ちそうにない。 となれば俺が古泉に助けを求めてしまうってのは消去法で確定的な選択肢だ。 が、古泉はいつもの俺たちの小競り合いを見つめる興味深げな面白そうな笑みを浮かべることなく、思いっきり苦笑を浮かべているだけである。 しかし、その表情は如実に「すみません。僕にもあなたを助け出すなんて無理です。ここは自力で乗り越えてください」と語ってやがる。 「きょぉ~~~ん、古泉くんは関係ないでしょぉ? どうせあんたが古泉くんの人の良さと有希の無口なのをいいことにこの子を連れ込んだことをやり過ごそうとしただけなんでしょぉ?」 ハルヒはちっとも笑っていない目で満面に笑みを浮かべながらさらに俺を締め上げる。 いや……悪いがその考えは全く逆だ……お前にこの子を見られたくないから古泉と長門が隠そうとしたんだ…… と言えればどれだけ楽かは分からんが、言ったところでハルヒが俺の言葉を信じるわけがない。それは長門のお墨付きだ。 じゃあどうする? このままでは俺は明日の朝日はもちろん、今日の夕日どころか、昼休み終了のチャイムさえ聞けそうにないぞ。 「あ、あの……そっちのあたし! キョンくんに乱暴しないでください……!」 って、え……!? その意外な助け船はこの場にいる人間の中では一番頼りになりそうになかったはずの、しかし精一杯勇気を振り絞った感ありありの声だった。 「パラレルワールドから迷い込んだですって!?」 「は、はい……」 明るい声を張り上げながら、ハルヒは爛々と輝く瞳で今一度マジマジとポニーハルヒを見定めている。 どうやらポニーハルヒは恥ずかしそうなのだが、こっちのハルヒがそんなものに構う訳ないよな。それも自分自身なんだ。自分が自分に気を使うなんてまずないだろうぜ。 「やれやれ」 俺は嘆息して、そのまま古泉と長門に視線を移す。 長門は無表情の中に少しだけ悔恨を隠しきれない表情を浮かべているし、古泉に至っては完全に無言でしかしその瞳はひたすら俺に謝り続けている。 まあ仕方ないよな。 俺だってハルヒが立ち去ったことで安堵してしまったんだ。長門と古泉が同じ思いを抱いて注意力も霧散させてしまったって仕方無いことだ。 「素晴らしいわ! そっちのあたし! ね、キョン、すごいと思わない? 今まであたしたちが逢いたくてたまらなかった宇宙人、未来人、異世界人、超能力者の内の一人なのよ! これで興奮してこなきゃウソってもんよ!」 ポニーハルヒから、まるで瞬間移動したかのように俺に詰め寄りながら口角泡を飛ばすこっちのハルヒ。 で、あたしたち、って何だ? 俺は別にそういった連中との遭遇を――待ち望んだことはないとは言わないが、それはもう中学を卒業する時に一緒にそういう夢を見ることからも卒業していたんだ。 だいたい異世界人と遭遇するのは今回が初めてだが宇宙人、未来人、超能力者とはもう逢っているんだ。 お前みたいに、そこまで興奮することもなければ驚愕することだってないぞ。申し訳ないがお前と喜びを分かち合ってやることはできん。 「なあハルヒ。そっちのハルヒはこっちに遊びに来たわけじゃない。迷い込んで来たわけだから、そんな嬉しがるような表情を見せちゃ悪いんじゃないか? お前もこのハルヒを向こうに帰してやる方法を考えてやろうぜ。そっちの方が彼女も喜ぶってもんだ。それにこっちのハルヒは世界が違うだけでお前でもあるんだ。お前だって自分が喜ぶことをしてやりたいと思わないわけじゃないんだろ?」 「ん、まあそうなんだけどさ。でも仕方ないじゃない! あたしにとっては四年ぶりの不思議遭遇なんだし、ちょっとくらい浸ったっていいじゃない!」 俺のツッコミにハルヒが会心の笑顔のままで、しかしどこか拗ねたような口調で返してくる。 四年ぶり、か…… ハルヒのその言葉を聞いて俺の胸の内には夏の夜空の下のグランドが浮かぶ。 もしかしたらハルヒの不思議遭遇はそれが最初だったのかもしれんな。 などと感慨深げにもなったりしたのだが―― 「そう言えば、そっちのあたしさ」 「え? な、何ですか!?」 いきなり振られて思いっきり戸惑うポニーハルヒ。 「そんなにおっかなびっくりしなくてもいいわよ。別にあたしだってあたしにイロイロしようなんて思わないもん。んなの自分がやればいいし、そうじゃなかったらみくるちゃんにやってもらうから」 はい、朝比奈さんはお前のおもちゃじゃないんだぞ。 俺はジト目の横目でツッコミを入れるがむろん、ハルヒは気にしない。 「それよりも気になったのは、あなたがこいつのことを『キョン』って呼んだことなのよ。向こうの世界のこいつもキョンって間抜けなあだ名なの? あとそっちのキョンとはどんな関係なの?」 「あ……うん……その……彼が『キョン』って呼んでもいいって言ってくれたし……」 戸惑うような口調はそのままなのだが、しかしポニーハルヒはどこか純情乙女の恥じらいの表情で、向こうの世界の俺との関係を話してくれた。 なんでもポニーハルヒはこっちのハルヒと本当にまったく正反対で、しかし内気すぎるがゆえにうまく人と接することができず高校入学から一ヶ月で、やっぱりこっちのハルヒ同様、クラスから孤立してしまったらしい。その間にやはりというかなんと言うかポニーハルヒの前の席になったのは向こうの世界の俺だったらしいのだが、その俺も入学式翌日から三日ほどは話しかけてくれてはきたがやっぱりうまく受け答えできなくていつしかそっちの俺もポニーハルヒに話しかけることを諦めたそうだ。 で、一ヶ月経って、このままじゃいけないと一念発起して、今の髪型・ポニーテールで登校した。 だが、もうクラスの誰もポニーハルヒを気に留める者はおらず、髪型のことを聞いてきてくれるクラスメイトはいなかったとか。 泣きそうになって落ち込んできたところに、向こうの俺が教室に入ってきて座った途端、振り向いて声をかけたんだとよ。「髪形変えたのか?」ってな。 ポニーハルヒは相当びっくりして思わず、あっちの俺の目を見て「うん……」と答えたところ、俺が「似合ってるぞ」と笑顔を向けてくれてかなり嬉しかったってさ。 それが高校入学以来、ポニーハルヒが初めて成立した会話とも言っていた。 んで、それがきっかけになって、以来、少しずつあっちの俺と会話出来るようになり、いつしか二人一緒に行動するようになっていったんだとよ。 あと長門との出会いも一緒に話してくれた。 もちろんこっちの長門じゃない。あっちの世界の長門のことだ。 あっちの世界の長門も文芸部室にいて、こちらと同じ文芸部部長という肩書を持っているらしく、ただその肩書は単にポニーハルヒと向こうの俺が入るよりも先に文芸部に入ったがために強制的に持たされた肩書だそうだ。向こうの文芸部も前の年の三年生が卒業して部員0、休部が決まっていたクラブなのだが向こうの長門が入部したことによりその危機を免れたとのこと。 このあたりはこっちの世界と似たようなもんだな。まあパラレルワールドは並行世界。似たような、それでいて違う世界がパラパラ漫画のように空間を隔てていくつも存在している世界なんだから詳細はともかく全体的な設定が似ていたとしても不思議はないんだろうぜ。 おっと、向こうの長門とポニーハルヒの出会いのいきさつだが、ポニーハルヒは元々、小説執筆が趣味らしく、入学当初から文芸部に入りたかったらしいのだが言うまでもなく思い切りを持てなかったんだってよ。 それで向こうの俺と一緒に行動するようになって、去年の文化祭での代理ヴォーカルのお礼にを言いにきた諸先輩方に一人で対面する気概が持てなかったこっちのハルヒ同様、一人じゃ思い切りを持てなかったもんで、そいつと一緒に文芸部室のドアをノックしたとか。 んで、むろん、このポニーハルヒを向こうの俺が放っておける訳もなく、一緒に文芸部に入部したそうだ。 向こうの世界の長門の裏設定は知らんが、こっちの長門と性格はどうやら違っていて、頼りがいがあり優しい笑顔がトレードマークの部長さんだそうで、向こうの俺に続いて、向こうの長門もポニーハルヒを受け入れてくれたんだってさ。 と言う訳で、こっちの世界の長門にポニーハルヒが縋ってしまったのも仕方がないというわけだ。 この後は、その後一年間のポニーハルヒと向こうの俺と長門との文芸部ライフや俺と親睦をどんどん深めていく話へと向かうのだが…… 「それでね……ずっと彼のことを名字の『さん』付で呼んでたんだけど、クラスのみんなが彼のことを『キョン』て呼んでたんで、思い切ってあたしもいいかな?って聞いたら、彼がちょっと困った表情を浮かべてたけど優しげに『いいよ』って言ってくれて……『その代わり俺もお前のことを下の名前で呼ばせてもらうぞ』って言って……って、あの……そっちのあたし、いったいどうしたんですか……?」 「いいえぇ~~~なんでもぉぉぉ」 ポニーハルヒの思い出話というかほとんど惚気話にしか聞こえない邂逅が進んでいくに連れてハルヒは殺意にも似たなんとも表現し難い雰囲気のボルテージを上げていったのである。 と言うか、ハルヒはポニーハルヒの思い出話の中の俺が「似合ってるぞ」と声をかけたシーンの時にいきなり俺に裏拳をかまし、『二人一緒に行動するようになった』ってところくらいでブルドッキングヘッドロックを敢行して、その後の話の間中、俺に脇四方固めを仕掛けて今現在ぎりぎりと俺を締め上げているのである。 ちょ、ちょっと待て……ポニーハルヒに優しげな声をかけたのは俺じゃなくて向こうの俺だ……あと一緒にいるのも俺じゃない……つか、俺も前にお前のポニーテールを褒めてやったじゃねえか……いや、マジで死ぬ……頼むから勘弁してくれ…… 「あ、でも良かった♡」 そんな俺とハルヒの絡みあいをちょっと戸惑い気味に見学していたポニーハルヒが急に安堵感を如実に表した表情で微笑みかけてくる。 これのどこが良かったんだ? このままだと俺はハルヒに殺されてしまいかねないのだが…… 「何が?」 と言う訳で声を出せない俺の代わりに問いかけたのは肩越しにポニーハルヒをどこか睨みつけているこっちのハルヒである。 その声もとってもドスが利いているのだが、どういう訳かポニーハルヒの笑顔は崩れる気配を全く見せない。 ポニーハルヒの思い出話とこの世界に現われてからの行動を鑑みればこっちのハルヒにビビって怖じ気づきそうなものなのだが…… 「だって、こっちのキョンくんとあたしも仲良さげなんだもん。だから安心した」 うぉい! よくもまあ臆面もなく朗らかな笑顔でんなことを口にできるもんですな!? 俺のツッコミは声にならなかったが、その言葉を聞いてこっちのハルヒが即座に思わず俺を開放してくれた。 んで、 「ちょ、ちょっと待ってよ! あたしとキョンは別に……と言うか仲が悪くなくて当然でしょ! だって、あたしが団長でこいつは平団員の同じ団所属なんだから仲悪い訳ないじゃない……! って、古泉くん! 何? その微笑ましいものを見るような顔は!」 「いえ、とんでもない。微笑ましいものを見るような、ではなくて本当に微笑ましいものですから」 「それはフォローになっていない。トドメ」 ハルヒの狼狽言い訳に古泉が応えて、長門が珍しくツッコミを入れた。 と言うか、俺もこんなハルヒは面白いとさえ思っている。さっきの首絞めのクレームなんざ銀河の彼方に葬り去れそうなくらいだ。 なんせ何も言い返せなくなって真っ赤になって言葉を失ったハルヒなんてそうそう見れるものじゃないからな。 そんな微笑ましいやり取りには当然時間制限があり、午後の始業チャイムが聞こえてくればお楽しみは放課後まで我慢しなくちゃないはずだったのだが今日は長門が情報操作してくれた。 どんな情報操作をしたのかと言うと俺とハルヒのクラスと長門のクラスの午後からの授業を全て自習にしたことである。 表向きな理由はハルヒのご機嫌どりでポニーハルヒと一緒に居させてやりたかったからだ。まあ、せっかくハルヒの目の前に現れた異世界人なんだ。心ゆくまで堪能させてやればいいさ。 できれば黙っていたかったんだがバレてしまったものは仕方がない。古泉と長門も開き直って黙認することにした。 むろん問題がないわけじゃない。ハルヒには『ある』と思ってしまえば現実になってしまう世界を都合よく改変できるというハタ迷惑な能力を持っているわけだから、これでハルヒは『異世界』を認識してしまったことになり、今後、わらわらと異世界人がそこら中の別世界から現れるかもしれんからな。 しかし、俺も古泉も長門も、ハルヒが別の認識を持ったことに気付いたから気にしないことにしたんだ。 何かって? それは俺が言ったことさ。 ――ポニーハルヒは遊びに来たんじゃなくて迷い込んだ―― 異世界からこっちの世界にはそう簡単に来れるはずもなく、奇跡に近い確率をくぐり抜ける、それも自分の意志ではない『偶然』というあやふやな事態が起こって初めて遭遇できる出来事であることをハルヒが理解してくれたんだ。 つまり、今回のことは文字どおり『たまたま』、異世界人と巡り会えたと思ってくれたってことさ。 こういう認識ならそんなもん、テレビや雑誌で報道される胡散臭い不思議現象とそう変わらない認識でしかないし、それが今回は(待ち望んでいたとは言え)珍しく自分の目の前で起こったってだけでイレギュラー事態としか思わんだろしな。 ハルヒは不思議な事柄はあると思っていながら逆にあり得るはずがないとも思っている訳で、ハルヒが望み、またあり得ないと思っているのは『自由に行き来できる異世界人』であり、そうでなければ常識として定着されるわけがない。 これが古泉と長門が黙認した理由だ。世界が揺らぐ心配がないからこそ放置したんだ。 もっともハルヒも含めて俺たちは是が非でもポニーハルヒを元の世界に帰してやらなきゃならないって気持ちは一致しているがな。 しかしだな。俺たちの午後からの授業を全て自習にしてまでポニーハルヒを保護しなくちゃいけないのは何故か。朝比奈さんは構わないだろうけど、それでも俺たち以外にポニーハルヒを見せたくないのであれば、この文芸部室に幽閉しておけば済む話だ。ここならSOS団以外、誰も入ってくるはずがない。来るとしても部外者しかおらず、当然ノックする。そんなもの鍵をかけて居留守を使えば済む話だ。古泉発案の傀儡生徒会長は俺たちが集まっていない限り来る訳がない。 と言うことはだ。もう一つ、このポニーハルヒを俺たちで保護しなくちゃならない理由があるわけだが、それを俺が知ったのはもうちょっと後になってからだ。 涼宮ハルヒの遭遇Ⅲ
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前:お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2837 次:お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2887 2837の続きと言うことで。アラレちゃん式のメンテだって社長にはお茶の子さいさいさ☆ -- のん (2008-07-23 11 59 46) 岩男への反応これかいw でもメンテナンス中の訪問って何かエッチだ……サーセンorz -- 名無しさん (2008-07-23 12 08 26) 岩男をメンテしてくれるとは…意外といいとこあんな社長w -- 名無しさん (2008-07-23 12 15 16) なのはが昇天してるww -- どっとあーる (2008-07-23 12 24 07) 恐い話を聞いたりした後はささいな事でもビビる様になるんだよねw -- 名無しさん (2008-07-23 15 54 31) びびるみんながかわいいな。確かに生首がしゃべるとやつらはビビる!私もビビる! -- 名無しさん (2008-07-23 18 58 38) これなんてあられちゃん? -- 名無しさん (2008-07-23 19 12 32) 社長は岩男の意識を落としてからメンテナンスするべきだったな。しかしそれにしても放心なのはかわええ -- とおりもん (2008-07-23 19 26 33) このなのはは絶対漏らしてるwwwwwwwwww -- 名無しさん (2008-07-23 20 43 50) 恐怖してる4人がカワイイww ビビりすぎだw -- 名無しさん (2008-07-23 20 50 28) 名前 コメント
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ここにはシュールな短編を置いてください 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 涼宮ハルヒのウイルス トライフリング・コーダ 長門有希の1日 もしもハルヒがゲームだったら 涼宮ハルヒのネットサーフィン 巨人の☆ 環 涼宮ハルヒの憂鬱?パロ フルーチェネタ 長門有希と愉快な獣達 バレンタインカオス 涼宮ハルヒの脱毛 ハルにゃんが大王 黒古泉 ナガえもん キョンのあだ名を考える 朝倉涼子の弁明 不条理日記 痔ネタ 手紙ネタ クイズ みくるの観察日記 モニタリング ピューと吹く!ハルヒ ミルキーウェイ 人生計画 長門とジャンプ感想文 門番の憂鬱 ドッキリ エビオスで精液ドバドバ キョンの性癖 オドリグルイ 鬼畜キョンの罠 ヤンデレーズ ケーキ 密室殺人事件 内視顕微鏡もしくは胃カメラ ハイテンションSOS団が出来るまで 鬼教師岡部 僕とあなたのスウィートナイト 長門の日記 馬鹿長門 古泉一樹の観察日記 涼宮ジョジョの奇妙な憂鬱 ブギウギ・マンハッタン・ツイスター キョンの絶望 それぞれの呼び方 長門vs周防 長門vs周防 ~その②~ ドッグファイト! ドッグファイト! ~その②~ 涼宮ハルヒの逃避行 ~その①~ 涼宮ハルヒの逃避行 ~その②~ 朝倉涼子のおでん 長門vs周防、再び 長門vs周防、三度 ちょっとアホな喜緑さんと長門さん エスパーマンが倒せない 朝比奈みくるのバット 朝比奈みくるのバット ~裏腹~ 朝比奈みくるのバット ~蒸し返し~ 朝比奈みくるのバット ~満願成就~ 仮面ライダーナガト 仮面ライダーキョン王 涼宮ハルヒの24 北高附属大学入試問題 サークルオブザムーン ● 佐々木の災難な日常 SMステ 古泉一樹の大暴走 門長艦軍本日大 くたばっちまえ 続!古泉一樹の大暴走 涼宮ハルヒの情報連結解除 スズミヤ家族24 幕張おっぱいほしゅ パフォーマンス過多な雪かき的文章(或いはB・L・Tサンド) -じくも-ズーリシ門長艦軍本日大 プーン 北京 世界のナガアサ 抜け殻 脱皮 小箱 空蝉 WC セキグチさん(ホラー) 周防九曜の侵略 涼宮ハルヒの仕業 涼宮ハルヒの悲鳴 長門有希とガリレオ 若布マヨご飯 もしもキョンが……シリーズ キョンにゃん、或いはネコキョンの可能性 せんてぃぴぃど 黒木田保守 催眠療法士喜緑さん 涼宮ハルヒの呪縛-MEGASSA_MIMIKAKI+冥&天蓋こんにゃく百合カレーmix-Relinquished あなたにポテト~差し入れの焼き芋にょろよー!!~ Dear My Friend いかすめる きらーん☆(註:メガネが光る音)かいちょーさん スク水 エロデレハルヒ 住民たちの団結 羽化 世にも珍妙な物語~内臓ブギウギ~ 胡蝶の夢 ポケットの中
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屋上に出てきてからどれくらい経っただろう。 もうすでにかなり経った気がしないでもないが、こういうときは想像以上に時間が長く感じてしまうものだ。 それにしても一体何が起こっているんだ? 俺がもう一人いる!?どういうことだ?どこからか現れたのか? 一番ありえるのは未来から来たということだろう。となると朝比奈さんがらみか? 大きい朝比奈さんか? とにかく少しばかりややこしい事態になっているようだな。 と、そこで屋上のドアが開かれた。 「古泉、……と俺か」 『涼宮ハルヒの交流』 ―第二章― 古泉ともう一人の『俺』が屋上に出てくる。 「おや、あまり驚いていないようですね」 「さっき声が聞こえたからな。そうだろうと思っていた。もちろん最初は慌てたが」 俺は『俺』の方を向き、古泉に尋ねる。 「で、そっちの『俺』は未来から来たのか?」 「な、それはお前の方じゃないのか?」 俺の質問に『俺』が声を荒げる。 「やはりそうですか……」 古泉が呟くように口を開いた。 「古泉、どういうことだ?」 「僕も初めはそう思いました。あなたが二人いるということは、どちらかが未来から来たのだろう。 だとすると、どちらかはあなたがこの時間に二人いるということを当然知っているはず、と。 しかし、あなたとは部室に向かう際に、こちらのあなたとは今ここに来る際に少し話をしましたが、 どちらのあなたにもそのような様子は見られませんでしたから、そういうこともあるかとは思いました。 いちおう確認しますが、あなたも違うのですよね?」 もちろん俺も未来から来た、なんてことはない。 「つまり俺もそっちの『俺』も未来から来たというわけではない、ということか」 「おそらくは。ちなみに今日がいつかはご存知ですか?」 「今日?ご存知も何もG.W明けの憂鬱な月曜日だろ。……まさか、違うのか!?」 「いえ、そのとおりです。ということは未来から無理矢理に連れてこられたということもないようですね」 静観していた『俺』が口を挟む。 「そっちの俺が嘘を吐いている、ということはなさそうか?」 「おそらくそれはないかと。あなたも嘘は苦手でしょう?僕なら簡単に見破れます」 「……なんか複雑だな」 『俺』は苦笑いを浮かべている。 「じゃあどういうことなんだろうな。古泉はどう思うんだ?」 古泉はお手上げといったポーズをとる。 「正直言ってさっぱりです。ひょっとすると涼宮さんの力が関係しているのかも、という程度です」 「どういうことだ?ハルヒの力が働けばわかるんじゃないのか?」 「厳密に言いますと、涼宮さんの力は無視できるレベルにおいては常に働いている、とも言えます。 そうですね、例えて言うなら我々がまばたきをするようなものです。 まばたきの際には無意識に一瞬目をつぶりますが、普通はそれによって何かが起こることはありません。 そのレベルで涼宮さんは無意識的にいつも力を使っていると言える、ということです」 「それはまずいことなのか?」 「いえ、それによって何かに影響が出たことは、我々の知る限り今までは一度もありません」 「なら問題ないんじゃないか?」 「あくまでも『我々が知る限り』『今まで』ということです」 「なるほどな。知らない範囲で起きている可能性は完全に否定はできないということか」 「そういうことです。僕としてはまずありえないと思うのですが……、他には思い付きません」 そういって残念そうに笑う。 「ちなみにそれだとお前はどう思うんだ?」 『俺』が古泉に尋ねる。 「何らかの理由によって、あなたが二人いて欲しい、と涼宮さんが思ったのではないでしょうか」 「さっき俺が役立たずと思いっきり罵られていたからか?」 『俺』はひきつったような笑みを浮かべている。 「二人で一人前ということですか。それはまた面白いですね」 いや、面白くないし、全く笑えん。が、 「ということは俺が一人前になれば全て解決ということだな」 そのとき後ろから突然もう一人声が加わる。 「そうではない」 「「な、長門!?」」 俺と『俺』は声を合わせて振り返る。 「ああ、長門さんには後で屋上に来てもらえるよう頼んでおきました。どうにも僕の手に余りそうだったので。 ところで、違うとはどういうことでしょう?仮定が間違いということでしょうか?」 「そういう意味ではない」 「と、言いますと?」 「それで解決とは言えない」 「どういうことでしょう?……長門さんの考えを聞かせてもらえますか?」 と、手で長門の発言を促す。 「最初に言っておく。これは情報統合思念体によって起こされた現象ではない。情報統合思念体は無関係。 そして、ここにいる二人は異時間同位体ではない。つまり別の人間」 「つまり宇宙人も未来人も関係していないということですか……。なるほど」 「以上のことからこれは涼宮ハルヒによって引き起こされたものと推測できる。ただし断定はできない。 その理由は我々にも涼宮ハルヒの力の発現が確認できなかったから」 つまり消去方でハルヒの力というわけか。 「そう」 古泉は言いづらそうに長門に尋ねる。 「ところで……言い方が非常に難しいのですが。長門さんにはどちらが本来の彼かわかりますか? いえ、本来のというよりも……我々の知る彼、と言うべきでしょうか?」 「それはどっちが本物か、って意味か?」 『俺』がすぐに古泉に確認する。 「……すいません。乱暴な言い方をするとそうなります」 古泉が本当に申し訳なさそうな顔を浮かべたので、俺は慌ててフォローする。 「いや、謝ることはない。俺たちも気になるし。な?」 「ああ」 と、『俺』も頷く。 とは言ってみたものの正直言って気が気じゃない。 まさか、俺が偽者なんてことはないよな。長門が間違えることはないだろうし。頼むぜ、長門。 俺たち二人に交互に視線を合わせた後、 「どちらが本物かという意味においては判断ができない」 「どういうことでしょう?」 「我々が今まで共に過ごしてきた方を本物とする根拠がない」 「なるほど。我々がよく知るからといって、そちらの彼がが本物とは限らない、ということですか」 「そう」 「では、今まで一緒にいた彼がどちらかというのはわかるのでしょうか?」 「わかる。……今まで一年間我々と共に過ごしてきたのはあなた」 長門はそう言い『俺』の方に向き直る。 「――っ、えっ!?」 俺……じゃないのか? じゃあ、俺は? ……偽者? 偽者なのか? ハルヒの力で生まれた、偽者? 「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!なんでだよ!」 もう何が何だかわからない。 そんな馬鹿な。 俺は昨日までもSOS団の一人として、みんなと過ごしてきたはずだ。 そして今日もさっきまで教室で授業を受けていた。クラスメイトとも会った。ハルヒとも話をした。 「落ち着いてください!別にあなたが偽者と言っているわけじゃありません」 「言ってるだろ!じゃあ俺はなんなんだよ。この記憶は嘘だっていうのかよ!どうなってんだよ!」 頭に血が上り、思わず古泉に詰め寄る。 「そ、それは……」 そのとき後ろから俺の手がギュッと握られる。 「落ち着いて。……お願い」 「な、……長門」 ハッと我に返る。 長門はじっと俺の目を見つめてくる。悲しいが、優しい目だ。 ……こんな長門の目を見たのは初めてだな。 初めて……か。 「す、すまん。古泉」 「いいえ。僕が変なことを聞いたせいです。本当にすいません」 古泉は本当に申し訳なさそうな様子だ。 別に古泉が悪いわけじゃないんだけどな。 「……いや、俺も知りたいと言ったわけだし。それに、大事なことだろ」 二人して黙り込んでしまったところに『俺』が申し訳なさそうに話を続ける。 「……長門、結局どうなっていてどうすればいいかわかるか?」 無神経なやつだな。と、少し思ったが、このままの空気は正直きつかったので実際には助かった。 まぁ、俺だしな。多少の無神経は仕方がないか。 「わからない。可能性としては古泉一樹の言ったこともあり得る」 「ならとりあえず何らかの方法でハルヒを満足させてやれば問題はないんじゃないか?」 「問題はある」 「なんでだ?この事態をおさめるにはそれしかないと思うんだが」 「違いますよ。……この事態をおさめることに少しばかり問題があるのです」 古泉が慌てて口を挟む。 どういうことだ? 少しばかり考えごとをしていたら話に全くついていけなくなっちまったぜ。参ったな。 とはいっても『俺』もついていけてないみたいだがな。 「何の問題があるんだ?」 再び尋ねている。古泉は長門と顔を見合わせた後、ゆっくりと話す。 「これが解決すると、彼が……消える可能性があります」 「どういう意味だ?」 「もし彼がどこかから来たのであればそこに帰るだけでしょうが、そうでないならば……」 「あっ!……」 『俺』の顔色が変わる。 そうだな。二人いてそれを一人に戻すということは俺が消えるってことになるか。 ……死ぬってことになるんだよな。 『俺』が慌てて俺の方を向いて言う。 「……すまん」 「いや、気にするな」 また沈黙が訪れる。 「もちろんそうでないという可能性もあります。 例えばあなたが涼宮さんの力によってパラレルワールドからやって来たというのもあり得ることですし、 逆に涼宮さんの力によってあなた以外の全てが創り変えられたということも無いとは言いきれません」 可能性か。確かにそうなんだろうが。 「でも、お前はその可能性は低いと思うんだよな?」 「……すいません」 「いや、気にするな。お前が謝ることじゃない」 とりあえずこれからどうするかが問題だな。 「古泉、なら俺はどうしたらいい?」 「そうですね。ずっとこのままでいるというわけにはいかないでしょうが、少し様子を見ましょう。 あなたにも考える時間が要りようかと」 そうだな。まだ頭の中がごちゃごちゃしてよくわからん。 「とりあえず、ゆっくりと息をつけて考えたい」 このまま『俺』と顔を合わせてたんじゃ、なんとなく落ち着かん。 家に帰ってからじっくりと考えることにするか。 ……ん、家? 「あなたは家には帰れない。私のところに」 確かに俺が二人帰ると家の中がとんでもないことになってしまうな。 「そうだな、そうするしかないか」 「そう」 長門は微かに頷く。 「けどいいのか?迷惑じゃないか?」 「ない。他に行きたい所でも?」 「いや、そういうわけじゃない。もちろんありがたい」 「なら問題ない」 結局また長門の世話になっちまうみたいだな。 「では今日のところはこのくらいにしておきますか。僕もこれからのことを考えておきます」 「ああ、頼むぜ。何かわかったらよろしくな」 「帰る」 と言って歩き出した長門に従いその場を後にする。 「俺もできるだけのことはしたいと思う。できることがあれば言ってくれ」 『俺』が後ろから声をかける。 「色々とめんどくさそうなことになってすまんな。何かあれば言うことにするさ」 ◇◇◇◇◇ 第三章へ
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学校で二人と別れ、そのまま長門の家に着くまで二人とも口を開くことはなかった。 これから俺はどうなるんだろうか。 未来から来たというわけでもないってことは、やはりおかしいのは俺の方なのか。そうなんだろうな。 古泉の言うように俺はハルヒの力によって創られた存在なのだろうか。 だとしたら俺に帰る場所はない?そのうち消えてしまうさだめなのか?そんなのは嫌だ。 仕方ない……なんて簡単には思えない。くそっ、どうすりゃいい。何も出来ないのか? 『涼宮ハルヒの交流』 ―第三章― 「入って」 「ん?ああ」 正面に長門の姿。どうやらいつの間にか長門の家に到着していたようだ。 「あまり焦って考えることはない」 確かにそのとおりなのだろうが。 「すまんな。わかってはいるつもりなんだが」 まぁあんまり暗い顔してたら長門も気分悪いよな。「いい」 それにしてもやっぱり長門の家は同じだな。目の前にはいつか見た、いや、いつか見たはずの部屋とほぼ同じ光景がある。 長門らしいというか何というか。 「何が食べたい?」 作ってくれるのか?特に食べたい物があるというわけでもないんだがな。 「なんでもいいさ。得意なのはあるか?」 「カレー」 即答か。やっぱり長門は長門だな。 「じゃあそれでいいか?」 「いい」 たまに違和感があるが、これはやっぱり俺の知ってる長門に違いないはず。 これがもしも創られた記憶だっていうならたいしたもんだな。 ならこれはもう一人の『俺』の記憶と同じなのか? あいつも俺と全く同じ経験をしてきたってことになるということか。いや、逆だな。 ……どちらにしろあっちが本物か。 「できた」 気が付くと目の前に大盛のカレーが。これは多すぎるんじゃないか、長門。 「お、おう。うまそうだな」 「食べて」 「ああ、いただくよ」 カレーをスプーンで大きくすくい、口に運ぶ。その動きを長門はじっと見つめる。 ……そんなに見られると非常に緊張してしまうんだが。 「どう?」 「おいしいぞ」 「そう」 そう言うと満足したのか長門も食べ始める。 別に嫌というわけではないが、黙々とカレーを食べ続ける二人。 これって客観的に見るとかなりすごい光景なんじゃないか? 食後には長門がお茶を出してくれた。 せめて片付けくらいはしたかったんだが、 「お客さん」 の一言で断られた。なんか迷惑かけっぱなしだな。 どうにもこういう間って気まずいんだよな。せめてすることでもあればいいが。 って、のんびりしてる場合じゃないか。色々と考えないといけないんだよな。 といっても状況もいまいち把握できてないし、長門にも聞きたいことがあるし、少し休憩としとくか。 ◇◇◇◇◇ しばらく一人でゆっくりとお茶を飲んでいると、片付けを終えた長門もやってきてお茶を飲み始めた。 「落ち着いた?」 「ん?ああ、お前のおかげで少しはな」 「そう、良かった。」 そう言ってゆっくりとお茶を口元に運ぶと、一口飲んだ後で思いがけない言葉を口にする。 「あなたは私に聞きたいことがあるはず」 え!?……まぁそれはそうなんだが。何から聞いたらいいものか。 せっかく長門もそう言ってくれていることだし、とりあえず聞けるだけ聞いてみるか。 「まず状況を整理したいんだが、いいか?」 「いい」 「宇宙人的でも未来人的でもない、なんらかの力によって俺が二人現れた。 ……じゃなくて俺が現れたことで俺が二人になった、が正しいか。で、合ってるか?」 「合ってる」 「で、俺は未来から来たわけでもないから、どこからか来たのではなく造られた人間の可能性が高い。 でも俺がどうして現れたか、俺はどうすればいいかということはわからない、ということだよな?」 「……そう」 どうすりゃいいかはわからない。 かといってわかっても困るんだよな。 「しかし問題が解決してしまうと、偽者である俺はおそらく消えてしまうことに――」 「違う」 長門が少し大きく声をあげ、否定する。 しかしその様子は怒っているというよりも悲しそう、いや寂しそうだ。 「な、長門……?」 長門は持っていた湯飲みを音をたてないように静かに置、俺に目を向ける。 「確かにあなたの言うとおり、あなたが造られた人間で、消えてしまうという可能性はある。 しかし、あなたは偽者ではない」 「どういう意味だ?造られたってんなら偽者…だろ?」 長門はさっきのように寂しそうな表情を浮かべ、わずかに視線を下に落とす。 そして、再び俺に目を合わせ、はっきりと言う。 「私は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイス」 ――ッ!!……そうだな。 そこでハッと気付く。そうだ。長門の言うとおりだ。 「……すまん。忘れてた。長門も、同じなんだな」 「そう。私も造られた存在。しかし私は私。偽者などではない。 あなたは確かに彼と非常に良く似た存在。でもあなたはあなた。彼ではない」 言われてみればそのとおりだ。俺は俺であって『俺』とは違う。 例え全く同じだったとしてもこうして今は別々に存在してるんだからそれは違うもののはずだ。 今は一人の人間として俺はここにいる。 「ありがとう、長門。それと、本当にすまん」 「わかってもらえたならいい。気にしない」 長門のおかげだろう。少し楽になった気がする。 迷惑かけっぱなしだな。まったく。 長門は何事もなかったかのように、再びお茶に手をつける。 今回に限らずいつもいつも世話になってるわけだし何か恩返しの一つでもしたいものなんだが。 残念ながら何も思いつかん。 俺ができることはこの状況の解決に協力するくらいか。 「おそらくだが、俺かあいつが何かをすれば元に戻るんじゃないかと思うんだが、長門はどう思う?」 「たぶんそう。そしてすることがあるならば、それはあなた」 ……そうか。 俺は何かをするためにここに現れたのかもしれないな。 ……とはいっても何をすればいいものか。 「長門は、原因についてどう思う?」 「詳しくはわからない。おそらく涼宮ハルヒが関わっていると思われる」 そうなんだろうが……、 「ハルヒの力が使われた気配はないって言ってなかったか?」 「全くないわけではない。それについては古泉一樹の言ったとおり」 なるほど。大きくはないが、常にハルヒの力は感じられるってことか。 なら今回はまさに異常事態だな。 「そうでないことはあり得るにしても、古泉の説が正しい可能性が高いってことか」 「そう」 古泉の言ったとおりだとしたら、やっぱり俺はここにいてはいけない存在なのかもな。 「俺は……どうすればいい」 「あなたの思うとおりにすればいい」 長門は答えを示すことはなく、はっきりとしない言い方をする。 しかし、できることがあるならばやりたいと思う。 何かあるならばそれを教えてもらいたいと思う。 「あまり判断を急ぐべきではない」 「どういう意味だ?」 長門は無表情のまま答える。 「むやみにあなたを危機にさらすことを私は望まない」 そうだった。 これが解決すると俺は消える、つまり死ぬことになってしまうかもしれないんだった。 ならどうすりゃいい。何もやらなけりゃいいってのか?いや、それは違うはずだ。 でも……死にたくはない。けど、覚悟を決めないといけないのか?そんなに簡単にはいかないぜ。 「焦ることはない。ゆっくりでいい」 ここにきて、長門が俺に気をつかってくれていることがはっきりとわかった。 思い返してみれば、一言一言が、優しさに溢れていたことが感じられる。 ありがとう。長門。 「すまんな。迷惑ばかりかけて」 「いい。」 おそらく長門はこの事態の早い解決を望んでいる。 そして、そのうえで俺が動揺しないように言葉を選んでくれている。 長門の力になりたいと思う。何かできることがあるならやりたいと思う。 「俺に、できることはあるか?」 でも、正直言うとものすごく怖い。 長門からは見えないだろうが、さっきから足は震えっぱなしだ。 まぁこの顔色を見れば一目瞭然かもしれないが。 「先ほども言ったように、あなたのしたいようにすればいい」 俺に何ができる? できることと言えば、ハルヒと話をすることか?何か原因がわかるかもしれない。 そのためには、 「長門、もう一人の『俺』と連絡はとれるよな?」 「とれる」 「明日、少しばかり変わってもらってハルヒに会ってみようと思う」 だが、長門はすぐに電話を貸してくれず、他の方法を示す。 「あなたには何もしないという選択肢もある」 「長門?」 「確かに今の状態は不安定。あなたもいつどうなるかわからない。明日には消えてしまうこともあり得る。 しかし、そのときまでここで私と生活するということもできる」 ここで長門とひっそりと暮らすってことか。確かに悪くはないかもしれん。 けどその生活はいつか急に終わってしまうのだろう。 それも俺の意思とは無関係に。 もちろんハルヒと会ったからって何かができるとは限らない。 けどそんなこと言ってこのまま長門に甘えてたんじゃ俺はもっと何もできなくなってしまう。 それに……いや、それとは別かもしれない。 「確かにそれも悪くはないかもしれん。それでも……」 それでも、俺はハルヒに会いたい。 「電話を貸してくれないか?」 「いいの?」 「……ああ、頼む」 長門は頷き、俺に携帯電話を渡す。 5回ほどのコール音の後に、『俺』の声が聞こえる。 『どうした?長門』 「……すまん、俺だ」 『ああ、おまえか。何かわかったのか?』 「いや、たいした進展はない。少しばかり頼みごとがあって電話したわけだ」 『……あんまり無茶は言うなよ』 やっぱり『俺』も不安があるみたいだな。そりゃそうか。 「言わねえよ。……明日ハルヒと話をさせてもらえないか?」 『一日変わればいいのか?』 「それでもいいが、部活の時間だけでもかまわん。いいか?」 『そうだな……。俺もハルヒの様子は少し見ておきたいから、部活の前に交代するってことにしよう』 「頼む。助かるぜ」 これでとりあえず明日ハルヒに会うことができる。 ハルヒに会えばきっと何かわかるはずだ。 『そのくらい構わないさ。……けど、お前はいいのか?別に無理することはないんだぜ』 『俺』も気をつかってくれているんだな。まるで俺じゃないように感じるぜ。 「気にするな。もう気持ちの整理はついた」 これは嘘だ。 怖くてたまらん。 『そうか。ならいいが』 「じゃあ明日は頼むぜ」 そう言うと『俺』からの返事も待たず、電話を切った。 長門に電話を返し、『俺』とのやりとりを説明する。 「すまんな」 「何?」 「色々と気をつかってくれたのに、断っちまって」 「いい。それにさっきのは私の……」 「……私の、何だ?」 「なんでもない」 微かに首を横に振りながら答える。 ひょっとしたら、ここで俺と過ごすことを長門も望んでいてくれたのか? なら……、 「ならなおさらだ。勝手ばかりやってすまん」 長門は再び小さく首を振る。 「いい。あなたのしたいようにするのが一番」 「ありがとう、長門。」 その後、疲れもあり、少し早めに眠ることに。 長門の後に俺が風呂に入らせてもらうことになった。 風呂から出てくると、長門はかつて俺が三年間眠っていた部屋に布団を二組敷いている。 ――って、二組?長門? しかも近っ!そんなピッタリにくっつけられると…… 「一人がいい?」 「いや、そういうことじゃ……」 ないんだが。 「なら問題ない」 いやいや、ありまくりだろ。 とは言っても昔は朝比奈さんとここで二人で寝たことがあるわけだし。 長門にはこれが普通なのか?いやいや、そんな馬鹿な。 ま、まぁ別に嫌なわけじゃないし。どちらかというと……嬉しい?それに、たぶんだいじょうぶだろ。 何がだ。 などと自分にツッコミを入れていると 「できた」 と、突然声をかけられ少し驚く。 「おわっ、ああ、ありがとう」 くそっ、びっくりして変な声が出ちまった。 「もう寝る?」 「そうだな、そうさせてもらうよ。おやすみ」 「……おやすみ」 ……何だ?今の間は。いや、気にするな。気にしちゃだめだ。意味なんかないはずだ。 落ち着け、クールになれキョン。だいじょうぶだ。何もしない。何もしない。 幸せか不幸せか、たぶん疲れのせいだろうが、電気を消すとすぐに激しい睡魔がやってきた。 ◇◇◇◇◇ ここは……? 夜中にふと目が覚める。 ここは俺の家じゃないな。どこだ?……そうか、長門の家に泊まってるんだっけ。 顔を横に向けてみると、眠っている長門の顔が見える。どうやら今日のことは夢じゃなかったみたいだな。 何時だかわからんがまだ夜明けまでは時間があるようだ。もう一眠りするか。 ってダメだ。全く眠れん。 おそらくさっきは相当に疲れていたからなんだろうが、一旦目が覚めると色々と気になってしまう。 いや、断じて言っておくが、隣に長門がいるからドキドキしてるなんとことはないぞ。 ……すまん、嘘だ。それもある。それももちろんあるんだが。 今日あったこと、それから明日のこと、これから俺はどうなってしまうのか。 体が震えてきた。 いちおうの覚悟はできてたつもりだったんだがな。そうカッコ良くはいかないみたいだ。 俺は……やっぱ死ぬのかな。 死にたくねえな。 ここにきて怖い。 もしかしたらSOS団のみんなとも明日にはお別れってことになるかもしれないんだよな。 ……ハルヒとも。 けどハルヒは俺のことなんか知らないんだよな。そう考えると寂しいな。 他のみんなにはともかく、ハルヒにはお別れの挨拶もできないわけか。 たとえできたとしても実際に言えるかどうかは微妙だな。その時がきたらびびってしまいそうだ。 それでも……ハルヒに会いたい。 明日、か。 明日ハルヒに会うことで、そのせいでハルヒと別れることになるかもしれない。会わない方がいいのかもしれない。 けどこのままハルヒに会うこともできずに消えてしまうなんてもっとごめんだ。 気がつくと目の端から涙がこぼれ落ちていた。 くそっ、それでもこの気持ちはどうにもならない。 「だいじょうぶ?」 「えっ?……ああ」 突然隣から声がかかる。 「泣いている?」 「だいじょうぶだ。起こしちまったみたいだな。すまん」 「泣いてもいい。むしろそれが普通」 そういって長門は布団の中で俺の手を繋いだ。 あたたかいな。恐怖心が少し和らいでいく。 「俺のことを知っているのは3人だけ、他の人は俺がいることなんて誰も知らない。 ハルヒにも朝比奈さんにも知られることなく、俺は消えていくんだよな」 少しの沈黙。 「あなたが望むなら、あなたのことを涼宮ハルヒに伝えてもかまわない」 なんだって?そんなことしたら……、 「なにかとんでもないことが起きてしまうんじゃいのか?」 「その可能性は高い」 「なら、どうして?」 「私は言った。あなたのしたいようにすればいい、と。後は私がなんとかする」 長門はそこまで俺のことを心配してくれているのか。確かにそれはありがたいが、 「そんな。……長門に迷惑をかけてまでそんなわがままはできない」 「わがままではない」 なんでだ?これは俺だけの都合だろ? 「涼宮ハルヒから自律進化のための情報を得たいというのは我々の都合。それをあなたに強制はできない。 だからあなたも自分の都合で好きなようにすればいい」 言ってることはわからないでもないが、 「それで世界がめちゃくちゃになるとしても、か?」 「先ほど言った。……私がなんとかする」 そっか。ありがとう長門。それでもさすがに俺にはそこまでする勇気がない。 「わかった。けど俺にはそれはできない。お前に迷惑ばっかりかけるわけにもいかないしな。 だからハルヒにも俺のことを話したりしない。けど、一つ頼みがある」 「何?」 「俺が消えてしまうことになっても俺のことをずっと忘れないでいてほしい。 そして、いつか全てが終わって何も問題ない時がきたら俺のことをハルヒに伝えてほしい」 ………… …… 返事がない、ただのしかばねのようだ。……じゃなくてどうした長門? 「な、長門……?」 何かあったのか?まさか寝ちまったんじゃ。 「……頼みが二つになっている」 あっ、しまった。ははっ。 と、思わず笑っちまった。 「すまん、じゃあ頼みは二つってことで」 「わかった」 心なしか長門も笑っている気がしないでもない。 「私はあなたのことをずっと忘れない。……ずっと」 そうか、長門がずっとというならそれはずっとなんだろうな。 「このまま、手繋いだままで寝ていいか?」 「いい」 「そっか、じゃあおやすみ」 「おやすみ」 ◇◇◇◇◇ 第四章へ
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(15):お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2292 14 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2240:(13) まとめ:Pickup_古城メンバー VS DIO アリスが!!! -- 名無しさん (2008-06-26 21 13 47) 続ききたww -- 広島の人 (2008-06-26 21 14 47) ロックにラッシュはないから磁石のハッタリは無理かな?つーかそもそもロックはそんなキャラじゃないか -- 名無しさん (2008-06-26 21 16 16) 普段丁寧語を喋るロックマンが、キレて口調が荒くなる展開とかアリだよなー。 いや、本編で一度だけミクを呼び捨てにしたのが印象的でな -- 名無しさん (2008-06-27 00 18 47) 切れても口調は変わらない -- 名無しさん (2008-06-27 00 36 17) アメリカ版なら口調が変わるってレベルじゃないけどねww -- 名無しさん (2008-06-27 00 42 52) 相変わらずかっけえ…惚れるわマジ -- 名無しさん (2008-06-27 01 13 03) 原作再現かと思ってたが・・・これはまた先が気になる・・・ -- 鳴門の人 (2008-06-27 02 15 59) wktk! -- 名無しさん (2008-06-27 18 07 53) 早く、早く続きが読みたい!www -- 名無しさん (2008-06-28 05 15 27) このロックマンはジョルノ並みに冷静だ -- 名無しさん (2010-08-17 13 08 37) 名前 コメント